宇宙ビジネスコート EoX=プロフェッショナルナイト

2019年2月22日(金)に宇宙ビジネスコートが主催する「EoX=プロフェッショナルナイト」が開催されました。
EoX=ナイトシリーズは、宇宙ビジネスにかかわる専門家の方と、一般のビジネスマンなどが宇宙ビジネスの今後について熱い議論を交わすトークイベントです。ディスカッションによって今後の宇宙ビジネスをどう展開していくか、いかに具体的にしていくかなどの議論を目的に、継続して開催されています。これまでも下記のようなテーマで開催されています。
EoX=未来都市ナイト
EoX=インバウンドナイト
Eox=グローバルナイト

■衛星データ活用において即戦力となる人材の育成


今回の「EoX=プロフェッショナルナイト」は、「即戦力となる人材の育成」についてをテーマとしています。人工衛星が2030年以降は40,000機も打ち上げれるといわれているなかで、現在の状況と今後の衛星データ活用に必要な人材をどう育成していくかゲスト2名を迎えて討論しました。
概要は下記のとおりです。

<トークゲスト・アシスタント>
■宇宙利用のプロフェッショナル
一般財団法人リモート・センシング技術センター
ソリューション事業部長 向井田 明 氏

■宇宙に係る人材育成のプロフェッショナル
一般社団法人宇宙利用新領域開拓機構【Space Edge Lab.】
代表理事 福代 孝良 氏

■みんそらコミュニケーター
前田 亜美 氏
所属 オスカー・プロモーション

<プログラム>
16:30~17:00 受付
17:00~17:05 オープニング
17:05~17:25 シングルトーク(ゲストによる活動や最新情報の紹介)
17:25~18:15 クロストーク(具体的なビジネスモデルなどの討論)
18:15~18:25 ディスカッション
18:25~18:30 クロージング
18:30~19:30 ネットワーキング

◇日程 2019/2/22 (金) 17:00~19:30(受付開始 16:30~)
◇会場:X-NIHONBASHI 東京都中央区日本橋室町1丁目5-3 福島ビル7階
◇参加費:3,000円(税込)

■オープニング・シングルトーク


司会進行役の持田氏が、EoXの目的として「議論をもとにアイデアの創出、事業企画、事業化をすすめていくこと」と、今までのテーマについて大まかに説明されました。
また、アシスタントの前田氏により、ゲストの向田氏と福代氏のご紹介がありました。

シングルトークではゲストのお二人がご自身の活動や専門分野についてご紹介しました。
向井田氏はRESTEC(一般財団法人リモート・センシング技術センター)の事業概要の紹介と、衛星センサの3つの種類などを話しました。そして、今後増えていく衛星データを活用するためのサービスや人材が不足していることを課題としています。

福代氏は、ご自身が行ってきたアマゾンの研究や宇宙の国際協力などについて紹介しました。宇宙ビジネスは、地上のインフラが使えないところに役に立つことを、森林伐採の事例などを踏まえて説明しました。そして、IOTや衛星写真を使って、環境保全など国際協力分野に活用していきたいとしています。

■クロストーク


活況となっていく衛星データビジネスですが、きちんと衛星データを扱える人材が不足していくことが予測されています。そのために、現場で即戦力になる人材について下記のようなテーマで討論が行われました。

■Q:最近のリモートセンシング業界はどうなっているの?
人工衛星やリモートセンシングの仕組みは、地上にある観測対象を衛星がモニタリングして、地上局のサーバーに画像データを蓄積していきます。この画像データを解析することで、一般の方などが利用することができるようになります。

こうした、リモートセンシングの仕組みが、最近世の中に少しづつ浸透して、一般のユーザーにも使われはじめました。それにともない、国内や国外でもリモートセンシングに関する法律が整備されてきています。日本では、2017年11月15日に「衛星リモートセンシング記録の適切な取り扱いの確保に関する法律(通称:リモセン法)」が施行されました。

■Q:法律やデータプラットフォームなどが分かりにくい!
A:リモセン法について
リモセン法は、基本的に事業者が守るべき法律です。
簡単に言ってしまうと、「衛星データを良くないことに利用されないように、事業者が守るルールを決めて守りましょう」というものです。事業者向けの法律なので、衛星データを利用する一般の人はあまり意識する必要はないものになります。これから衛星データに参入する事業者などは要注意の法律です。

A:プラットフォームについて
プラットフォームは「データがたくさんアーカイブ(保存しておく場所)されているもの」です。ものによりますが、30年位前までさかのぼった世界中のデータがあるプラットフォームもあるそうです。
また、プラットフォーム上で簡単に解析ができる機能がついているので、個別にダウンロードしなくてよく完成したデータだけもらえます。日本では、経済産業省が主導する事業から「Tellus(テルース)」が2019年2月21日にリリースされました。Google Earth Engineなど海外では様々なプラットフォームがあります。

■Q:これからの衛星データプラットフォームは具体的にどう使うのか?
昔は特別な人が、特別な理由で20万円以上などの高い値段で買って利用していたが、今はプラットフォームのおかげで無料で手に入ります。身近な例でいえば、GoogleMapやGoogleEarthでもみれるようになっています。

しかし、本当に欲しいデータを手に入れるにはやはりプラットフォームが必要になります。現在は過去のデータを蓄積しているプラットフォームが多いですが、毎日データが更新されるようになるのも間近と言われています。
さらに、画像解析の機械の進歩により、自動的に前日との変化を判断することもできるようになります。前日と比べて森林がなくなった場所、元気な緑と元気でない緑などを自動的に判断することも可能になっていきます。それぞれの事業者によって、必要なデータを取得することができるシステムを作ったりすることも可能となっていきます。

このように昔に比べたら簡単に衛星データを使えるようになっています。しかし、衛星データの特性やソフトを使用するのは専門的な知識やスキルが必要で、だれでも使えるわけではないのが課題となっています。

■Q:ビジネスの現場で即戦力となる人とは?
即戦力となる人材とは「専門家と末端のユーザーとつなげる役割ができる人」であるとしています。
必要なスキルとして、下記2つが必要。
・技術が分かる(基礎的な知識や、Pythonなど専門的なツールを使える)
・新しい技術を取り入れ続けるスキル
・衛星データを使いたい人のニースが分かる

衛星データ活用では、まだできないことも多いです。
何ができないことで、何ができることなのかを知ったうえで、お客さまの課題を拾い上げて、解決策を出していける人が必要になっていきます。

■Q:どうやって即戦力人材を確保していくか?
技術がしっかり分かる+新しいものを取り入れるのは前提として、「しっかり」とはどんなレベルかを定量化することが必要。
そのために、運転免許証のようにスキルや品質維持のために、「衛星データアナリスト認定制度」が必要ではないか。

一般の人は、衛星データの良し悪しなどは区別がつかず、どれが自分の目的にあったデータなのかや、良いデータなのか判断できない。
画像データなどを選ぶときに、値段だけで選択してしまいしっかり活用できないことや、フェイクニュースなどによる被害の防止なども踏まえて制度を作っていくことが必要としています。

■ディスカッション


会場参加者から質問に答えるディスカッションでは、下記のような多くの質問が飛び交いました。

Q:リモートセンシングビジネスの課題は?
A:すぐに使えないためプラットフォームの整備が必要 

Qコンステレーションのサイバーセキュリティについて知りたい!
A:パスワードや、データ保護のシステム導入なども検討

Q:軍事利用で衛星の利活用はどこまですすんでいるのか?
A:軍事と民間利用の両方つかえるものもある。

Q:アナリスト認定制度はできるだけ公的認証がいいのか?
A:公的機関でなくてもいいが、行う機関がどれだけ信用される機関かどうかが大切

まとめ

衛星データの活用は、まだまだ一般ユーザーが使うということには課題が多いのが現状です。少しでも一般ユーザーに知ってもらい、使ってもらう機会が増えていけば、より使いやすく改善していくことができると思います。そのためにも、衛星データを利用するための人材育成や認定制度の作成はとても大事なテーマだと思います。今回の討論も、宇宙ビジネスが前に進んでいく有意義な内容でした。