宇宙ビジネスの衝撃(大貫 美鈴 著)の書評・感想 – おすすめ宇宙ビジネス本5
今回は『宇宙ビジネスの衝撃』(大貫 美鈴著 ダイヤモンド社)をご紹介します。
著者は、清水建設株式会社宇宙開発室そして独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)での勤務を経て独立。宇宙ビジネスコンサルタントとして、欧米の宇宙企業のプロジェクトにも積極的に参画しております。
宇宙ビジネスの最先端
前著『来週、宇宙に行ってきます』(春日出版)と比較すると、米国の宇宙ビジネスも数多く紹介してあり、地球上の最先端の宇宙ビジネスを垣間見ることが出来ます。
米国の宇宙ベンチャー企業とNASAの商業軌道輸送サービス(COTS)は連動していて、規制緩和による競争原理と民間活力を生み出した良い事例だと思います。イーロン・マスクとジェフ・ペゾスが共通している点は、輸送機を安くつくり、その先に潜む無限のマーケットを見据えているというのは私も同感です。
世界の宇宙関連ベンチャーへの投資も2015年は約2500億と前年の約500億から5倍に膨れ上がっており、特にベンチャーキャピタル(VC)の宇宙投資が10倍に跳ね上がっています。マーケットも最近の10年超で約2倍の33兆円にまで拡大しているようです。
宇宙ビジネスの実例
宇宙からのビッグデータの運用例では、小型衛星ベンチャーのプラネット社が取り上げられています。農業支援プラットフォームに高頻度の地球観測画像を提供しており、活用すると栽培している作物の生育状態や糖度など作物の質も常時把握することが出来ます。日本の実例でも、佐賀県の嬉野で、おいしいお茶の成分を分析し、その成分の状態になるタイミングでお茶の葉を摘むという衛星データを使用したお茶を開発しました。
日本では、2016年に衛星リモートセンシング法が制定されたので、衛星データを利用したビジネス環境が整いつつあります。一般人にも関心が高い宇宙旅行は、サブオービタル旅行がいよいよ実現間近で、ヴァージン・ギャラクティック社とブルーオリジン社の現状が説明されています。
まとめ
最後に日本の大手企業だけでなく、次世代を創造する宇宙ベンチャー企業を数社紹介。前著の後に拝読すると、ここ数年で世界の宇宙ビジネスが発展した状況が理解出来ます。宇宙ビジネス史を肌で感じている著者なので、大変説得力があります。