国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウム

2019年2月12日から13日に国際宇宙ステーション「きぼう」利用シンポジウムが開催されました。
国際ステーション(International Space Station以下ISS)は、日本,米国,ロシア,カナダ,欧州各国の合計15ヶ国が協力して、地上から約400km上空の宇宙空間に建設した有人実験施設です。
そして、「きぼう」とはISSにある日本初の有人実験施設です。実験スペースには、1気圧の空気で満たされ地上と同じ服装で活動出来る船内実験室と、宇宙空間で実験を行う船外実験プラットフォームがあります。
今回、参加者は250人程で、シンポジウムは2日間にわたり4部構成で進められました。

第1部「きぼう」利用から始まる価値の創造

基調講演はJAXAの若田光一氏の「有人宇宙活動の現状と将来展望」で、民間による有償利用の増加(2007年4件⇒2018年9件),ロボット実験等の日米協力による国際プレゼンスの発揮,光通信端末やハイパー・スペクトルセンサなどの宇宙機システム技術実証の増加の現状と2024年までのISS計画等に言及されました。
 
パネルディスカッション「宇宙を新薬設計に役立てる―基礎研究から民間利用への拡がり」では、ぺプチドリーム株式会社舛屋圭一氏から「年4回ではなく、いつでも上げられのがベスト。タイミングが選べるので、数が多いにこしたことはない。」との要望もありました。日本の民間企業だけでなく、海外の民間企業も考えた方が良いのでしょう。
 
パネルディスカッション「活動領域を広げる実践場としての宇宙空間―民間利用の成果と事業化への取組み」の中では、株式会社ソニーコンピュータサイエンス研究所の岩本匡平氏が「宇宙ビジネスをするということは、世界でビジネスをするということ。アメリカの企業はとてもスピードが速いので、注意している。」,三井物産株式会社の大山洋平氏は「宇宙関連ビジネスは儲かっていないが、付随するサービスで黒字にするのは難しいと思っていない。」など宇宙ビジネスのヒントになるような意見も出ました。 

第2部 国際宇宙ステーションが創る市場

基調講演はNanoRacks社のMr.Jeffrey Manber氏の「ISSが拓く地球低軌道(LEO)の経済―LEO市場の創出と拡大」で、「ボーイング社も、もともとベンチャーで政府の力を必要としていた。」「航空機も最初の顧客は政府。航空機で手紙を送っていた。」「フロンティア市場では、初めから成功することはない。」など宇宙ビジネスに関わる方々を勇気づける言葉が印象的でした。

パネルディスカッション「LEOの技術革新が社会にもたらす価値」では、慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏が「日本はロボットに強みがあるので、ISSに繋げていく必要がある。」「宇宙ビジネスは民間企業だけでは難しいので、お金の余っている官民ファンドを利用するのが良い。」などの提言をされました。

第3部 JAXA/NASA Joint Workshop

「ISS利用の今後の展望」ついてJAXAの若田光一氏とNASAのMr.Sam Scimemi氏が対談しました。「競争するのではなく、共創してマーケットを広げることが大切。」,「ISSの利用は終わらない。全ての面でアップグレードしているので、どう運用していくかが重要。」といった有意義な意見交換となりました。

第4部 地球低軌道活動の発展に向けた今後の期待と展望

パネルディスカッションは「2025年以降の地球低軌道活動への期待―民間の視点から」で、日米欧の視点から自由討論で盛り上がりました。最後にSpace Tango社のMr.Twyman Clemens氏が「とても興奮している。キューブサットも一つの産業をつくった。インターネットのブロードバンドインフラが出来た後、いろんなサービスが提供された。これからどう進んでいくかを見ていきたい。」との考えに感じ入りました。

まとめ

宇宙ビジネスはまだ民間企業だけでは成り立たないので、国際的な視点で各々の得意分野を活用し、共存共栄する方向で業界のマーケットを拡大していくことが望ましいように感じます。