日本ものづくりワールド2019「特別講演 宇宙産業の技術動向」
2019年2月6日~8日に東京ビックサイトで「日本ものづくりワールド2019」が開催されました。
今回、7日に行われた「特別講演 宇宙産業の技術動向」というセミナーに参加しました。
衛星データを使った様々なサービスが大きく拡大してきています。
衛星や探査機等を宇宙へ送るためには、ロケット打ち上げて宇宙まで運ばなければなりません。
そうした、ロケットを打上る事業の現状と今後の展望についてが分かるセミナーです。
■セミナーのテーマと講師
「基幹ロケット」がもたらす 衛星打上輸送事業と宇宙産業の今
~高い打上げ成功率を誇るロケットの技術開発と展望~
三菱重工業株式会社
執行役員フェロー 防衛・宇宙セグメント技師長(H-IIA/H-IIBロケット打上執行責任者)
二村 幸基氏
■基幹ロケットとは
基幹ロケットについて、液体燃料ロケットと固体燃料ロケットがあることなどの概要と、ロケットの役割を説明されました。
人工衛星や探査機を、宇宙空間の所定の軌道まで運搬することと、地球の重力に負けず宇宙空間にとどまれるよう速度を与えることがロケットの役割だとしています。
■宇宙産業構造
宇宙産業構造を4段階に分けて説明されました。
・宇宙機器産業(人工衛星、ロケット、地上施設などの製造や運用)
・宇宙利用サービス関連(通信、放送、観測、実験など、宇宙インフラを利用したサービスの提供)
・宇宙関連民生機器産業(カーナビや通信端末など、民生機器の製造)
・ユーザー産業群(宇宙利用サービスと、宇宙関連民生機器を、購入・利用して自らの事業を行う産業群)
宇宙機器産業と宇宙利用サービス関連の業界が宇宙産業を下支えしていくことで、今後、宇宙関連民生機器産業とユーザー産業群が大きく拡大していくとしています。
■開発ヒストリと信頼性
日本のロケット開発は、1970年代に宇宙開発事業団(NASDA)が開発をはじめました。
N-Ⅰロケットに始まり、開発を重ねることで初めての国産ロケットといわれるH-Ⅱロケットなどを経て、現在はH-ⅡA、H-ⅡBロケットが使われています。
ロケットは試験飛行ができないため、一発勝負の製品です。
一つの部品トラブルが、致命的な事故や失敗につながってしまうため、確実性と安定的に機能することが前提になるとしています。
そのため、たくさんの実験や打ち上げから得られるデータを蓄積して開発を続けています。
H-ⅡA/Bロケットの打ち上げ成功率は約98%ありますが、他国のロケットも同じかそれ以上の成功率があります。
他国のロケットとの差別化をはかるために重視している指標として、設備のトラブルで打ち上げができなかった率を計る「オンタイム打ち上げ率」を重視しています。
オンタイム打ち上げ率が高いと、天候不良以外で打ち上げができなかった回数が少ないため、製品の品質が高いことを証明できるとし、各国のロケットとの差別化をしています。
■課題と今後の展望
最近の市場では、大きく2つの変化があるとしています。
1:新しいプレイヤーの出現
アメリカ合衆国の民間企業スペースX社により開発されたファルコン9のように、比較的打ち上げサービス価格が安い業者など新しいプレイヤーが増えてきているとしています。
これによって、衛星輸送の低価格化や、大型ロケット開発のコストダウンなど市場競争が激しくなってきています。
2:打ち上げニーズの2極化
更新度の高い場所に置いておく静止衛星を飛ばすための大型のロケットと、比較的高度の低い衛星を飛ばすための小型のロケットに分かれてきています。
2020年には各国が国際競争力をあげるために開発している新機種のロケットが次々に登場してきます。
それらに対抗するために、三菱重工ではH-3ロケットの開発をすすめています。
簡素化、汎用化、共通化というキーワードのもとに、製造の自動化や3D素材の活用によってコストを抑えるなど、ものの作り方を変えていく必要があるとして開発に取り組んでいます。
■まとめ
こうしたロケットの開発・発展によって、宇宙ビジネスは今後ますます発展していくことが予想されます。
イプシロン4号機のようなロケット打ち上げによって、私たちの生活で何が変わってくるのかを考えると興味深いです。