【おすすめ宇宙映画を語る~ドリーム編~】宇宙ビジネス編集長太田裕二×映画脚本家石橋勇輝の対談

対談動画

 

冒頭

編集長「はい、皆さん、こんにちは。Space Biz編集長の太田です。対談の相手は、お馴染みのいっしーです。宜しくお願いします。いっしー、今回はこちら、ドリームという映画なんですよ。」

いっしー「記憶に新しいですね。」

編集長「この映画は2016年に米国で製作されて、日本でも2017年に公開されています。原題は『Hidden Figures』なんですけど、邦題はなぜかドリームなんですよね。」

いっしー「結構ありますよね、洋題と邦題が違うのって。」

編集長「いっしーが原題を訳すとしたら、どんな題名になる?」

いっしー「そうですね。Hiddenが隠されたで、Figuresが人物なので、歴史の陰に隠された人物みたいな感じですかね。」

編集長「それ、ピッタリだね。ドリームより、その訳の方がいいんじゃないかなと思うね。解析幾何学などを得意とする女性の計算手が主役のこの映画なんですよね。宇宙映画を違った側面から描いているとも言えるよね。」

いっしー「普段、見えない部分を描いていますね。」

編集長「そうそう。そんな感じがします。今回も3つ位に論点を絞って語ってもらおうかなと思います。では、いっしー、早速、1つ目の論点はどうですか。」

論点1:宇宙開発と黒人の権利拡大、揺れ動く時代をとらえた名作

いっしー「先程、題名の話が出たと思うんですけど、まさに歴史の陰に隠された人々、つまり縁の下の力持ち。」
編集長「あー、日本的に言うとそうだね。」

いっしー「当時の宇宙開発の裏側を徹底的に描き切った作品だなと思いますね。テーマとしては、ほんとに宇宙開発にとどまらず、コンピュータによって世界はどう変わったのかが描かれてますし、あと、黒人女性がどうやって権利を拡大していったのか、そういった歴史も見れるバラエティーに富んだ作品になっているかなと思います。」

編集長「IBMがここから発展したんだぞというのが分かる所があるよね。」

いっしー「最初に巨大なIBMの機械が運び込まれたシーンで、『これは、何だ?』っていうセリフがありましたね。パソコンが普及する前に存在していた計算手という職業、それが今の人達の視点から面白く見えるんじゃないかなと思っていて。ロケットの軌道とかを、いちいち手で計算していたと思うと、ほんとに頭が下がりますね。

月に行ったのは、白人っていうイメージが強いと思うんですけど、その白人の背後で、支えるために必死で計算していた黒人もいたし黒人女性もいた所が、アメリカの多様性の強みみたいなものを表していると感じますね。アメリカの違った側面が見える作品となっていますので、是非、チェックしていただきたいなと思います。」

編集長「差別も描かれているんだけど、それでも優秀な女性はしっかり活かしたいというのが表れているよね。」

いっしー「器の大きさが他の国では感じられないものがありますね。」

編集長「1958年から1963年に実施されたマーキュリー計画の時代なんですよね。過去の歴史を振り返って、名も無き天才にスポットライトを当てるのは、後世の重要な仕事のように感じない?」

いっしー「あー、そうですね、確かに。当時はそこまで目立たないですからね。」

編集長「同時代では見えないことが多いので。我々もそうした使命あるかもよ。」

論点2:三人の主人公それぞれの自己実現

編集長「ではね、2つ目の論点はどうですか。」

いっしー「こちらですね、三人の女性が主人公になりまして。計算手として成長していく主人公もいるんですけど、他にもいろんな立場に置かれた黒人女性がそれぞれの自己実現をしていく過程が凄く爽快感がある描かれ方をしてまして。凄腕の計算の技術を持っていても、中々、自分のやりたいことをさせてもらえない女性ですとか。

あとですね、学位を持っているのにNASAでなぜか働かせてもらえないとか。あとは、逆に経営者的なことをしているのに、全然実力を認めてもらえなかったりとか、ポジションを与えてくれないみたいな。そういった、いろんな立場で苦しんでいる黒人女性が白人を倒すみたいな、スカッとした内容が描かれているので、ストレスたまっている方に良いかなと思いますね。個人的に面白いなと思ったのは、経営者的な仕事、部長のような仕事をされている女性が出て来るんですけど、その方が仕事でくすぶっていた時にFORTRANというコンピュータが入って来るんです。

FORTRANをいち早く学んで、コンピュータ室の室長になってしまうという描写があったんですけど、新しい時代の波に乗って差別というのが洗い流されてしまう、時代の変化によって形勢が逆転していくのがストーリー的に面白いのかなと思いました。」

編集長「ビジネスの世界でも、そういった所があるね。中小企業とか零細企業が大企業に勝っていくのは、こういう世界だね。違った価値観(サービス)で勝負していくという所がね。」

いっしー「激動の時代を上手く切り取った作品なのかなと思いますね。」

編集長「差別って程でもないけど、今の時代を見てると、ちょっと学歴信仰がいきすぎている所があるよね。ここ100年位で。肌の色とかだと日本ではあまり感じることはないんだけどね。どんな世界でも、いろんな才能を持っている方がいらっしゃるという見方が必要かなと感じがしますね。」

いっしー「学位を持っているのに働けない女性は、判事に直談判して判事の心を動かして、ようやく白人の学校に通わせてもらうという形で自己実現したと思うんですけど。そういった勇気と強さが大事かなと思います。」

編集長「主人公達の成功する過程が描かれていますけど、正しいと思うことはちゃんと自己主張もするし、交渉力なんかも日本人には凄く勉強になりますよね。まず、日本人だと黙ってしまって耐え忍ぶというのが美徳とされているけど、海外とか特にアメリカとかは、そういう感じじゃないですよね。」

いっしー「そうですね。やっぱり、自分の権利を主張したり。」

編集長「いきすぎると良くない面もあるんだけどね。アメリカの良さと日本の良さを上手く融合すると、いいのかもしれないね。」

いっしー「女性の強さが垣間見える作品ですね。」

編集長「黒人として不利な状況で、前例のない快挙を成し遂げたのは、夢に向かう信念なのかもしれないよね。」

いっしー「信念がないと、この強さは湧いてこないですね。」

論点3:宇宙を前にして、人類は平等

編集長「出て来ないよね。ではね、3つ目の論点はどうですか。」

いっしー「差別っていうものが凄く描かれている作品ではあるんですけど、同時にですね、宇宙を前にして人間は平等、人類は平等なんだよというメッセージが強く込められた作品かなと思います。非常に印象的なシーンがあって、主人公キャサリンですね、この方を苦しめたのがトイレ問題。職場の計算室から黒人用のトイレに行くために、2km位走らなければいけないということで、さすがにキャサリンも爆発してしまうんですよね。

計算室がシーンとなってしまって。そこで、室長にあたる方が黒人用トイレの看板を破壊してしまうシーンがあって、その時におっしゃったのが『NASAでは小便の色は同じだ。』というセリフがあったんです。宇宙という大きなものを前にした時に、肌の色は関係なく、人間であること人類であることが、共通の絆なんだって所が描かれていたのかなと思いますし。

また、白人の宇宙飛行士の方が、最後にGoサインを出す時に信頼したのは、コンピュータの計算じゃなくてキャサリンの手計算だったです。人間対コンピュータみたいな、人間の絆で繋がって宇宙に行くんだっていうメッセージ性が感じられましたね。」

編集長「キャサリンの一番の上司、室長が『天才の中の天才を見つけることだ。一人いれば全員で成功を勝ち取れる。』と言った場面があったけど、こういう考えには肌の色も年齢も関係なくなってくるよね。」

いっしー「そうですね。白人から黒人の嫉妬心みたいなものが描かれていたので、チームマネジメントの所が凄く勉強になるかなと。」

編集長「ほんとに外面ではなく内面を見る目があれば、人間の本質を見間違うことはないのかなと思います。難しいんだけどね。皆その時代の価値観とかの影響を受けちゃうからね。メディアの影響とかも。100年後になったら、今の価値観が違うかもしれないよね。」

いっしー「確かに。これだけ変わったので。」

まとめ

編集長「今回の作品を観ても、あらためてデジタルだけでなく、アナログの大切さが分かりました。」

いっしー「手計算というのは、今の時代忘れ去られていますよね。」

編集長「そっちの方が信頼があるんだよね。人間の直感力なんかもアナログになると思うし。」

いっしー「データを見ているだけでは見えて来ない全体感みたいなものですよね。」

編集長「デジタルはデジタルで大事な所もありますけど、デジタルを使いこなすのも私達人間ですからね。これから時代が変わっていくかもしれませんけど、忘れてはいけない視点なのかなと思いますね。」

いっしー「なるほど。そういった、いろんなメッセージを読み取ることが出来る作品ですね。」

編集長「今回、素晴らしい作品でしたけど、次回も素晴らしい作品ご紹介しますので、是非、お楽しみにしてください。では、またね。バイバイ。」

いっしー「バイバイ。」

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