【おすすめ宇宙映画を語る~インターステラー編~】宇宙ビジネス編集長太田裕二×映画脚本家石橋勇輝の対談
対談動画
冒頭
編集長「はい、皆さん、こんにちは。Space Biz編集長の太田です。対談の相手は、お馴染みのいっしーです。宜しくお願いします。いっしー、今回はこちら、インターステラーという映画なんですよ。」
いっしー「これは有名ですね。」
編集長「難解で有名ですかね。」
いっしー「そうですね。いやー、難しい。」
編集長「題名のインターステラーを翻訳すると、惑星間の、といった意味になると思うんだけど、いっしーがこの題名を日本語訳にするとしたらどうなる?」
いっしー「そうですね。星々の間の旅人みたいな。旅人的なニュアンスが強いのかなと。」
編集長「その方が分かりやすいかもね。最初に言っておきますけど、1度観て分かるような映画ではないんですよね。すべてを理解するのは1回では難しいといった方がいいかな。ほぼ不可能だと思いますので、事前に作品の解説などを読んでみると良いかもしれませんね。」
いっしー「そうですね。ある程度、ネタバレ解説読んでから観ても、全然いい映画かなと思いますね。」
編集長「それでも楽しめる映画だね。私の方も数回観てるんですけど、観るたびに理解が深まっているように感じますね。ちょっとずつ面白味が分かってくるのかな。」
いっしー「ストーリー分かった上で観ると、ここを中心的に観ればいいというのも分かりますし。」
編集長「今回も3つ位に論点を絞って語ってもらおうかなと思います。では、いっしー、早速、1つ目の論点はどうですか。」
論点1:難解な作風を好む映画監督ノーランと、どこまでも科学に忠実な製作総指揮者
いっしー「こちらの作品の監督はですね、難解な作品で知られるクリストファー・ノーラン監督という方ですね。ただですね、こちらのノーラン監督ばかり有名なんですけど、製作総指揮者、元々原案を出した方はキップ・ソーンという物理学者なんですよね。なので、元々は物理学者がこういう映画をつくりたいという企画したのが始まりなので、特殊な映画なのかなと思います。スピルバーグ氏が監督をする予定だったらしいです。いろんな事情があって降りてしまったようですが。元々、キップ・ソーンさんがですね、どういう指令を出したかというと、絶対に物理法則に逆らった描写はするなという一つのルールを決めたらしんですけど、もめたらしいです。ノーラン監督はどうしても光速を超えるような描写をしたいと言ったらしんですけど、ダメだということで2週間位もめたようですね。そうしたいろんな経緯があって出来上がった作品になっているので、ある意味、知的に面白い映画です。」
編集長「それは知らなかったな。でも、理系的頭脳を持ついっしーが観て、あれこれはおかしいぞという場面はあった?ここだけの話で。」
いっしー「深読みして善意に捉えるといろんな読みがあるんですけど、どうしてもおかしいと思うのはブラックホールを抜け出せているところがですね。どうしても引っかかるかな。」
編集長「確かに言われてみると、そうだね。この作品は2014年に製作されたのですが、クリストファー・ノーラン監督は、製作にあたって『2001年宇宙の旅』を最も意識したようですね。また、2017年にノーベル物理学賞を受賞している理論物理学者のキップ・ソーン氏が科学的な監修をしておりますので、難解になりますよね。」
いっしー「キップ・ソーン氏はホーキングさんの友達としても有名ですよね。教育的にはいい映画なのかもしれませんが。」
編集長「そう意味ではいい映画ですね。では、2つ目の論点はどうですか。」
論点2:ファンをやみつきにする物語展開
いっしー「先程、少し物語の批判をしてしまったんですけど、やはりファンを病みつきにする物語展開ですね。ネットで調べると、いくらでも深読みの考察が出て来るということで有名ですけど。ざっくり説明しますとですね、地球が滅びはじめてしまっていて、砂塵が常に巻き上がっている、サンドストームが到来して何も出来なくなってしまうみたいなところで地球から移住しなくてはいけないミッションとなるんです。ラザロ計画のラザロが何を意味しているのかはいろいろな深読みがあったりするんですけど、人類が生き延びていくためのプランとして一つは集団移住するプラン。もう一つは何と受精卵ですね、それをバイオポットに入れて送り出して、向う側で繁殖させるという、ある意味キリスト教のラザロの復活になぞらえているらしいですよ。一度、死んだ人類がもう一度バイオポットで蘇生されるという。現代的なラザロの復活ですね。」
編集長「へー、現代的になっているんだね。ラザロよ、出て来なさいの生き返りではなくて。なるほど。」
いっしー「そういった物語展開が凄く面白いのかなと思いますね。いろいろと矛盾点は多いんですけど、面白い発想が散りばめられているのかなと。」
編集長「確かに、そういう視点で観ると面白いのかもね。ラザロの復活はこういう形で現代的に描いているんだという見方だけでもね。」
いっしー「凄くウイットが効いてますね。」
編集長「きいてますね。なるほど。相対性理論とか量子力学など物理学に興味のある方は、たまらんでしょうね。」
いっしー「しかもですね、映像に凄くこだわっておりまして、ブラックホールのシーンがあったと思うんですけど、あれを科学的に正確に描写するために新しいCGソフトを開発しちゃったらしいんです。この映画のために。それほど、こだわりがあって、つくられています。」
編集長「それは凄い。例えば、水の惑星の1時間が地球での7年に相当するとか、氷の惑星では、確か昼67時間夜67時間ありましたよね。最後の土星軌道上のクーパーステーションなんかは、未来の宇宙ステーションを表しているようで、アイディアというか物理学を活かしながらね、ウイットを効かして面白く描いているところはありますね。」
いっしー「普通はビジュアル化すると退屈しちゃうところもありますが、映像で表現することで、こんな感じで見えるんだって上手に表現してますね。リアルさにこだわるという意味でも、水の惑星のシーンはあまりにも寒い環境で撮影したため、女優が低体温症になってしまったりとそうした苦労を乗り越えた作品となっていますね。」
編集長「なるほど、さすがですね。ではね、3つ目の論点はどうですか。」
論点3:テーマは「時空間を超えて届く愛」
いっしー「こちらですね、ノーラン監督自身の個性でもあるんですけど、凄く難解な作品を描くんですけど、伝えたいのは結局愛。脚本的にみると、シンプルなものを伝えようとしているのかなと思います。今までのノーラン監督の作品『インセプション』とか『ダークナイト』『メメント』とかの作品があるんですけど、全部やたら複雑なストーリー展開なんですが、結局は男女の愛であったり親子の愛であったりとか、そういったものを伝えるのが中心を貫くものになっています。本作品は難解な物理学の知識を使いつつも愛ですよね。『愛は私達にも感知出来る。時間も空間も超えるの』みたいなセリフがあったと思うんですけど、そういったメッセージが込められているので。ハードSFなんですけど、愛を描いている点で斬新な作品なのかなと思います。」
編集長「作品全体としては、壊れゆく地球が悲しい印象で描かれていますが、地球を救うための人類愛も同時に描かれていますよね。対比して人類愛が際立つようにしているのかもね。愛は時間や空間をも超えていくので、科学的思考などの知に勝るように感じますね。」
いっしー「それが物理学者のキップ・ソーン氏と愛を描くノーラン監督の共作であるからこそ、生まれた作品なのかもしれませんね。」
編集長「地球人として生きる私達に宇宙的視点を与える作品だと思います。日常生活に埋没するようでしたら、日本の常識や地球の常識を今一度考え直してみる良い機会になるかもしれませんね。次回もお楽しみに。バイバイ。」
いっしー「バイバイ。」
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