【おすすめ宇宙映画を語る~2001年宇宙の旅編~】宇宙ビジネス編集長太田裕二×映画脚本家石橋勇輝の対談
対談動画
冒頭
編集長「はい、皆さん、こんにちは。Space Biz編集長の太田です。対談の相手は、お馴染みのいっしーです。宜しくお願いします。いっしー、今回はこちら、2001年宇宙の旅という映画なんですよ。」
いっしー「これは、中々、通の作品ですね。」
編集長「通の作品になってきましたね。今回、宇宙人映画が終わり、宇宙映画の始まりです。」
いっしー「純粋な宇宙映画。」
編集長「僕のネクタイも宇宙っぽいでしょ。」
いっしー「確かにそうですね。」
編集長「今回は第1回目ということで着けようと思って。この作品はね、観ていただいたと思うんだけど、冒頭約3分間、音楽だけ流れて画面が真っ黒なんだよね。」
いっしー「DVDが故障したんじゃないかと。」
編集長「僕も、最初DVD壊れちゃったんじゃないかと思いましたね。その後も、猿のシーンが20分位あって長く感じなかった?」
いっしー「長かったですね。いや、もー、いつ観るのやめようかなと。」
編集長「後半は段々面白くなってくるんだけど。最初のところがね、ちょっと間延びしている感じがありますよね。でも、未だ全てのSF映画の最高峰だとも言われています。制作が1968年ですので、スター・ウォーズよりも10年程古いんですよ。それだけ価値があるかもしれないね。」
いっしー「古いですね。10年前にもかかわらず、映像技術は劣っていないですよね。」
編集長「今から50年以上前の作品になんですよね。今回も3つ位に論点を絞って語ってもらいたいと思います。では、いっしー、早速、1つ目の論点はどうですか。」
論点1:「叙事詩的SF映画」という異色なカテゴリ
いっしー「こちら2001年宇宙の旅、題名はご存知の方多いと思うんですけど、中々、長尺ですし、観るのにハードルが高いと思われる方が多いと思います。ざっくり意味合いというか、説明させていただきますと、こちらカテゴリーとしては叙事詩的SF映画、異色なカテゴリーになっておりまして。テーマは何と人類の進化を描こうとしている野心的な作品です。構成自体も、まず最初の20分で、猿がいかに道具という概念を手にしたかというのを描く第一部とですね。その後、未来に飛んで、人類が宇宙に出て行き、初めて異星人とコンタクトを果たす第二部と。最後に人類が進化を果たす第三部の構成になっています。こんな凄い作品が誰から生み出されたかというと、映画界の巨匠であるスタンリー・キューブリック監督とSF界の伝説であるアーサー・C・クラーク氏が二人で共同執筆された作品です。」
編集長「それだけで話題性になるよね。」
いっしー「小説も出ていまして、クラーク氏が書いた小説をもとに、それを脚本に書き起こしたという形らしいですね。あと、エピソードとして、手塚治虫氏にも協力依頼を送ったらしいんですけど、手塚氏は忙しいからと断ったという面白いエピソードもあります。」
編集長「なるほど。それは知らなかったな。この作品を1回観て、すべてを理解するのは難しいよね。」
いっしー「ちょっと難しいですね。」
編集長「僕も何回か観てるんだけど、おすすめとしては、映画を観る前か後で、原作の小説をちゃんと読んでおくと映画の理解が深まるかもしれないなと思いますね。」
いっしー「確かに映像単体で成立している作品ではないかもしれないですね。」
編集長「大分、中味も違うのかな。小説と。」
いっしー「そうですね。ストーリー自体は同じなんですけど、説明されている内容が異なると思いますね。」
編集長「もっと具体的に描かれているということなんだよね。」
いっしー「セリフもちゃんとありますし。」
編集長「そうか、ほとんどセリフないもんね。この作品。美的に表しているだけで。1つ目はそんな感じで大丈夫ですか。」
いっしー「はい。そうですね。」
論点2:キューブリック監督の映像美
編集長「では、2つ目の論点はどうですか。」
いっしー「セリフがない分ですね、映像美が際立っていまして。キューブリック監督の映像っていうのは、もともと凄く有名だと思うんですけど。幾何学的対称性を意識した映像になっていますよね。例えばですね、モンタージュという映像の切り替えの工夫が目立つシーンがあるんですけど。猿が骨を投げるシーンがあって、その投げた骨が宇宙船にモンタージュされるという。」
編集長「あー、あれって意外と分からないかも。あれが繋がっていくんだよね。進化したってことなんでしょ。」
いっしー「道具って概念が、進化して宇宙船になったという象徴的な表現があったりして。あと、最後のクライマックスの神秘的な映像ですね、人間が進化を果たして、最終的に胎児、赤ちゃんの形になって精神的な何か覚醒を得る描写があるんですけど。そこら辺はですね、キューブリック監督じゃないと描けなかったシーンなのかなと思います。」
編集長「でも、ほんと、この作品はキューブリック監督のつまった作品。だから、また注目されたものがありますよね。」
いっしー「作家のエッセンスが凝縮されてますね。」
編集長「先程も言ったように、宇宙を映像美で語るSF映画とも言えるんじゃないかと感じていて。今と違って、CG技術がない時代に、よくぞこれだけきれいな映像を撮ったものだと感心しますね。」
いっしー「歴史的意味合いが。創造力を掻き立てるというか、作家にとってはインスピレーションの源になるような作品なんじゃないかなと思いますね。」
編集長「あとはね、回転する宇宙船の無重力空間の描写や宇宙旅行での子供とのテレビ電話、進化した宇宙食サンドウィッチなど宇宙ならではの描写も楽しめるよね。」
いっしー「確かに。無重力を感じさせる描写で印象に残っているのは、ボールペンが空中を移動して、それを取っているシーン。日常的な描き方が上手いですし、今観ても古びていないですよね。」
編集長「古びてないよね。」
論点3:「幼年期の終わり」にも描かれる、クラークの思想
編集長「古びてないよね。では、3つ目の論点はどうですか。」
いっしー「キューブリック監督のお話をしましたけど、原作となったクラーク氏の発想をお話したいと思います。こちらに凄く似た、『幼年期の終わり』というSF小説があるんですけど、それにも通じる思想が描かれていて。最後にAI宇宙船と人間が格闘したシーンがあって、その末に人間が進化を果たす描写があるんですけど。精神の成熟を経て、人間が新しいフェーズに移行する思想が描かれていて、キューブリック監督もそこに凄く共鳴してこの作品をつくったと言われているんですけど。メインテーマである音楽『ツァラトゥストラはかく語りき』はニーチェの超人思想に通じるものが多少はあるかもしれないですけど、人間を超えていく思想が描かれているのかなと思いますね。また、AI宇宙船と格闘するシーンというのが、今観ても凄く象徴的で人間の知性の暴走というか、そういったものに対してどうやって向き合っていくのかという意味においても、この作品は象徴的だなと思いますね。」
編集長「現在、AIの時代になってきておりますが、人間がAIに使われる危険性を50年以上前に警鐘しているのは凄いよね。」
いっしー「そうですね。まさに予言者的な作品ですね。」
「難解な映画」という評価は妥当?
編集長「あと、3つ程論点語ってもらいましたが、最後に1つ質問があります。こちらの作品の評価ですけど、難解な映画というのは妥当なのかな?」
いっしー「難解というのは否めないと思いますね。私自身も2年前に初見で観た時に寝落ちしてしまったという。本当は、詳細なナレーションがつく予定で、クラーク氏が入念にナレーションを用意していたと言われています。それをキューブリック監督に提案したところ、私は映像で語りたいということで、ナレーション全て削除してしまったようですね。なので、ほんとに味わうためには、クラーク氏の書いた小説と一緒に観るのが良いのかなと思いますね。」
編集長「ナレーションがあったら、この映画って、もっと観られたかもしれないね。映像美とね、もう少しそれを具体的に分かりやすくすれば。」
いっしー「もっとヒットしたかもしれないですね。人気を博すのと哲学を貫くのと両立するのは難しいのかもしれないですね。」
編集長「なるほど。ほんとね、この作品はテンポが遅いですし、ムダも多い作品ですが、宇宙空間が舞台だと考えると意外と計算しているのかもと思ってしまうところもありますよね。」
いっしー「確かに。宇宙は静寂ですからね。」
編集長「そう、静寂でゆっくりとしたテンポになりますからね。そういったことを感じさせてくれる作品ですね。」
いっしー「ある意味、宇宙に行った気になるような。」
編集長「確かに宇宙に行った気になります。この作品は宇宙映画を語る意味では欠かせない作品ですので、是非一度観ていただきたいですね。では、次回もお楽しみに。バイバイ。」
いっしー「バイバイ。」
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