“みちびき”のサービスが実現する玄関前までの道案内

「目的地周辺です。案内を終了します」
 
もうすぐ目的地と思っていると、カーナビからの案内を終わる無情なメッセージ。
「これからだろ!」と思われた方も多いと思います。
 
最近では、高精度な電子地図と高機能なカーナビの登場で、目的地の直前まで案内してくれるようになってきていますが、まだまだ、その数は多くありません。
これを一変する位置情報サービスを実現するのが、2018年11月1日に実運用を開始した日本の測位衛星システム“みちびき”です。
 

■みちびきの概要

“みちびき”は、日本の天頂付近を通る軌道を飛行することから、準天頂衛星と呼ばれています。下図に示すように、準天頂衛星の動きを地球の表面に描くと、8の字を描くことから、8の字衛星とも呼ばれます。“みちびき”は、日本上空に8時間程度滞在するような準天頂軌道に測位衛星3機を投入して、24時間常に1機が見えるようにしています。

■みちびきの2つの特徴

“みちびき”には、二つの大きな特長があります。
ひとつは、“みちびき”がアメリカのGPS衛星と同じ信号をもっているので、GPS衛星として機能します。
しかも、“みちびき”は、いつも日本の上空にあるので、GPS受信機では、同時に電波を受信できる衛星が増え、安定した測位ができるようになって、位置精度の誤差を減らすことができます。
 
ふたつ目は、これまでのGPS衛星だけでは得られないセンチメートル級の高精度な位置を実現する補強信号と呼ばれる信号を送ってきます。
自動車や農業用トラクターなどの自動運転には、運転中の車両位置を正確かつ継続的に把握しなければなりませんが、“みちびき”からの信号は、山間部や都市部のビル街などでもさえぎられにくく、車線レベルの正確な車両位置を把握でき、高い位置精度で玄関前まで案内することが可能となります。
更に、車載センサなどと組み合わせることで、より安全な自動運転を可能とします。またシンガポールなどで利用されているロードプライシングと呼ばれる有料道路の自動課金システムやサッカーやラグビーなど運動選手の動きや位置を正確に把握して、戦術分析や効果的なフィジカルトレーニングなど、さまざまな分野での活用が期待されます。

■まとめ

この他にも、“みちびき” は、地震、津波などが発生した時には、災害・危機管理通報を送信することができます。学校、病院などの公的建物、街灯、信号機、自動販売機などの路上施設で受信して、スピーカーから警報を出すことや安否確認サービスを“みちびき”経由で地方自治体などに連絡することができます。
  
“みちびき”が実現する位置情報を利用することで、様々な事業領域での新たなサービスを創りだすことができると共に、子どもや高齢者の安心・安全をサポートすることができます。更に、“みちびき”は、日本と経度の近いアジア、オセアニア地域でも、利用することができるため、これらの地域での新たな事業やサービスの創出も期待されています。