【しゅたいんの”トンデモ科学ニュース”】ノーベル賞物理学者ロジャー・ペンローズ卿の「裏の顔」

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【しゅたいんの”トンデモ科学ニュース”】ノーベル賞物理学者ロジャー・ペンローズ卿の「裏の顔」

今年10月、イギリスの物理学者ロジャー・ペンローズ卿が遂にノーベル物理学賞を受賞しました。

ペンローズ・タイルの発見や「ツイスター理論」など様々な数学的功績を持つペンローズ卿ですが、今回の受賞は、「特異点定理」によってブラックホールの実在を一般相対性理論から数学的に証明した功績に対して贈られたものです。

ところが彼には、「もう一つの顔」があることをご存知でしょうか。

それは、認識論と物理学の結合によって科学の枠組みの根本改造を目論む「革命児」としての姿です。

これまでにもペンローズ卿は、『皇帝の新しい心』『心の影』『心は量子で語れるか』など、この「新しい科学」の方針宣言のような書を精力的に世に問うてきましたが、その包含しようとする範疇があまりに大きすぎるために、各界の科学者の批判を浴びてきました。

特に彼を敵視するのが、近年力を増してきている「強いAI」論者です。人間の「意識」はコンピュータによって再現可能であると考える人々に対し、ペンローズ卿は明確なNOを突きつけます。

彼がその根拠として提示するのが、「計算不可能性」の概念です。

ペンローズ卿自身若い頃は、強いAI論者に似た信念を持っていたそうです。ところが大学で「ゲーデルの不完全性定理」を習った際に、認識が覆りました。20世紀初頭、ヒルベルトという大数学者を中心とした当時の数学界の「あらゆる数学の定理は形式的な記号操作によって記述できる」という信念を、ゲーデルは「どんな数学理論の中にも、真なのに証明不可能な命題が存在する」ことを示すことによって打ち砕いたのです。

夢も希望もないように見えるこの理論ですが、ペンローズ卿の解釈によればこれは数学的な記号操作の中に「意味」が介在していないゆえに起こる限界です。すなわち、「意味」を伴わない記号操作によっては本当の「理解」が生まれず、そのような形でしか思考することができないコンピューター=計算機=AIには、本当の意味の「意識」が宿ることはあり得ないと言うのです。

では、意識は一体どこから出てくるのでしょう。

そこでペンローズ卿が注目するのが、「量子論」。

アインシュタインの相対性理論と並ぶ20世紀の二大科学革命の一柱ですが、前者がニュートン力学の「アップデート版」であるのに対し、量子論はまだつい最近産声をあげたばかりの不完全な理論です。「量子論を勉強すればするほど、その不完全さに目がいくようになる」とペンローズ卿は自著のなかで語っています。

中でも一番大きな問題は「観測問題」として知られます。

量子論では粒子を「波動関数」として捉えます。確率の波として時空間にボンヤリと広がっている「波動関数」は観測者が観測を行うことによって初めて一つの値に収束するのですが、この「波動関数の収縮」が起こるメカニズムについて様々な意見が対立しており、いまだに決着が付いていないのです。

「観測データを都合よく説明できればいい」と考える科学者たちはこの観測問題を相手にしようとしません。現象としての説明を行うだけならば、実際にそこで何が起こっているのかを理解する必要はないからです。ところがプラトン的「真理」の実在を信じて追求するペンローズ卿はそこで止まりません。

この量子力学の不完全性を治療するために、「計算不可能性」を取り込んだ数理モデルを構築する必要がある、と彼は主張します。

「計算不可能性」とは、コンピューターが行うような記号操作によってはたどり着けない領域のことを指します。しかし、計算不可能な数学理論などがあって良いのでしょうか。数学とは計算ではないのでしょうか。

ここで、ペンローズ卿の洞察の中でも一番衝撃的な事実が効いてきます。

それは、「決定論」と「非計算性」は両立しうるという考え方です。

決定論は、ある原因があれば必ずそれに対応する一通りの結果が生まれるとします。これだけ聞くと、「原因」と「結果」の機械的対応関係があり、あたかも「設計図と材料」があれば「製品」が機械的に生産されるように見えるでしょう。

この見方では、「決定性」と「計算可能性」はイコールで結ばれており、「決定論的非計算性」が出現する余地はありません。

ところが、ここで「原因」から「結果」が生まれる過程をある種のアルゴリズムとして考えたことは、一つの仮定に過ぎないのです。ある原因から導かれる結果が一通りに定まっているとしても、それが「機械的」に導き出されると信じる理由はどこにもないのです。

こう考えると、「ある関係を決定論的に記述する式」を本質とする数学と、「非計算性」は、決して矛盾するものではなくなります。

ペンローズ卿にとって、この「計算不可能」な決定論的=数学的真実が存在する世界、すなわちプラトンの言う「イデアの世界」こそが、次なる科学的探求の地平なのです。

そして、この「計算不可能性」において、人間の「意識」と「量子論における波動関数の収縮」が交差します。さらにここに、「量子重力」が絡み、宇宙構造が関係してくる壮大なビジョンが展開されます。

アインシュタイン以来の天才と評されるロジャー・ペンローズ卿。その彼が見据える新しい「科学」の未来は、一体どんな姿をしているのでしょうか。期待に胸が膨らみます。

英語・要約版 動画①②

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