【しゅたいんの”SF小説の書評コラム”】アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

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2020.10.13SF Space Biz TV

【しゅたいんの”SF小説の書評コラム”】アンドロイドは電気羊の夢を見るか?

映画「ブレードランナー」の原作となったこの小説。「題名だけなら聞いたことがある」という方も多いに違いありません。自らを「フィクション化する哲学者」と称したSFの大家、フィリップ・K・ディック。彼が1968年に出版したこの小説は、思想家や科学者をはじめとする現代の読者に今もなお鮮烈な問いかけを与え続けています。

 

タイトルに示される通り、テーマは「アンドロイド」と「人間」の対決。その裏側で、電気によって駆動する「模造動物」と、自動車並みの高級品と化した「生きた動物」との対比が描かれます。通常のSFとの大きな違いは、彼の描く世界の中では、この「機械」と「生物」の違いが、見た目では全く区別がつかないほど「似て見える」という点です。

舞台は第三次世界大戦後、荒廃し「死の灰が降り注ぐ」地球。主人公であるリックに、火星の植民地から地球に脱走してきたアンドロイド6名を仕留める任務が与えられます。冷酷無比な悪者アンドロイドを懲らしめる痛快なアクションドラマが展開されるかと思いきや、見事に読者の予想を裏切る展開が待っています。「主人公が殺したアンドロイドが実は人間だったかもしれない」、「自分が仲間だと思って協力していた人間が実はアンドロイドかもしれない」、そうした複雑な疑問が頭の中に渦巻き始め、「人間とアンドロイドの違いはどこにあるのか」ということを考え込ませる展開に巻き込まれます。

ネタバレは控えますが、結局、人間とアンドロイドの違いはどこにあるのでしょうか? ディックが示した答え、それは「共感」でした。人の痛みを想像して自分も苦しみ、人の喜びに接して自分も喜ぶような心。こうした心の温かさのようなものが、機械的な行動パターンに支配されたアンドロイドには決して持つことのできない、人間だけの聖域だったのです。

ところがここで大きな疑問が頭をもたげます。果たしてディックはこの「アンドロイド」の描写を通して何を伝えようとしていたのでしょうか? もちろん、現代にはAIがありますから、進化したAI頭脳が人間と見分けがつかない形をしたロボットに組み込まれた将来を予言していたと解釈することも可能でしょう。しかし、もっと穿った見方をするならば、ここに「我々自身がAIのような機械思考に支配された時、人間がアンドロイドに成り果てる」というメッセージを読み取ることも可能ではないでしょうか。

科学が進歩することで、我々のアイデンティティは危機に直面し、「人間とは何か」という問いに対する答えは常に更新されていきます。AIが進歩し、言葉も話せ、感情に似たものすら持つかに見える今、「人間」とは何でしょうか。ディックはこの小説を通して、今も我々にその疑問を問いかけ続けています。

 

■英語・要約版

Stein’s Diary
http://stein.tokyo/
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