S-NETセミナー・ワークショップin仙台
2018年11月13日にS-NETセミナー・ワークショップin仙台が開催されました。S-NET(スペース・ニューエコノミー創造ネットワークの略称)とは、内閣府が創設し、宇宙をキーワードにした新産業・サービス創出に関心を持つ企業・個人・団体等が参加するネットワーキング組織です。
講演1「宇宙産業政策の新たなビジョン」(内閣府)と講演2「ビッグデータ時代の新たな衛星データ利用」(経済産業省)の講演は、直近のS-NETセミナーin福島とほぼ同様の内容でしたので、前回の記事を参考に一読していただければと思います。
先進事例を紹介するセミナーは、東北地方ならではの事例を中心にお伝えします。
最初に地方独立行政法人青森県産業技術センターの境谷栄二氏は「衛星データを利用したブランド米の生産支援」について講演しました。「青天の霹靂」というブランド米の取組報告です。「青天の霹靂」での衛星情報の利用は、米の美味しさに関係する栽培管理に有用な情報(収穫時期,米のタンパク質含有率,土壌の肥沃度)を衛星画像から水田一枚ごとにデータ化しています。
産地全域の13市町村で2016年からデータを活用しているようです。例として、米のタンパク質含有率は、栄養条件による稲の色の違いから推定。タンパクが低くなりやすい稲は薄い緑、タンパクが高くなりやすい稲は濃い緑で、衛星画像を利用して判別しております。ちなみにタンパクの低い米は、粘りがあり、柔らかく美味しいとのことです。衛星画像からお米のタンパクを推定し、水田毎に色分けしたタンパクマップも活用しているのですが、適用の難易に地域差があり、田植期間が長いほど精度が低下してしまうそうです。ですから、東北地方などの東日本は温暖な九州地方などと比較して精度が高いと言えます。衛星画像から土壌の肥沃度(腐植含量)を推定する費用面も、化学分析の130分の1におさまります。実際の品質も、2017年産の1等米比率が99%で全国平均の70%を大きく上回り、他の品種の約1.3倍の販売価格となっております。3年余りで、理想的な付加価値商品に育っています。
次に東日本高速道路株式会社の中谷了氏が「準天頂衛星を活用した除雪車運転支援システム」について話しました。NEXCO東日本が管理する高速道路約3,900kmのうち、約60%の2,500kmは積雪深が1m以上の豪雪地帯を通過しているので、雪氷対策は重要な業務となっております。
準天頂衛星を活用することにより、運転席のガイダンスモニターには、路肩内の横方向の車両位置,左側のガードレールや右側のレーンマークとの離れ,接触・はみ出しを回避する車両の修正,路肩幅・作業注意情報などが表示され、はみ出しが大きい場合は警告音がなるようです。これらは、経験の浅いオペレーターに安全・確実な除雪車の運転を支援します。10年分の経験の穴埋めが出来るとのことですので、労働生産性に大きく貢献しています。自動化へのロードマップでは、2021年以降低速のロータリー除雪車から自動化され、高速の除雪トラックも完全自動化になる予定です。地域に根差したサービスを考えることこそ、サービスの王道なのかもしれません。
セミナー後のワークショップは、リモートセンシング講座・演習、アイデアソン、宇宙ビジネス相談会からの選択制となっております。