SpaceX Starlink計画 商用だけでなく軍事ネットワークにも活路
2020年5月27日、Space Xと米国陸軍は、Space XのStarlink計画であるグローバルブロードバンド環境を活用した軍事ネットワーク実験を行うことで合意した、と各メディアが報じた。この実験については、3年間の期間、実施するようだ。
SpaceX Starlink 計画の活用
まず、Space XのStarlink計画をおさらいしたい。低軌道に約4万機の通信衛星を打ち上げて、世界中にインターネット環境を提供するサービスだ。現在までに、400機の衛星が打ち上げられている。Falcon9で一度の打ち上げで60機の衛星が打ち上がるのは圧巻だ。
米国陸軍は、このStarlink計画のグローバルブロードバンド環境を軍事ネットワークとして活用したい考えのようだ。この話は、Space Xが米軍に対して売り込んだのか、米軍がそもそも興味を示していたのか、その辺りの初動は不明だ。しかし、このネットワークを活用することで、世界中の米国の戦闘機、無人機、戦車などの装備品や隊員などに通信し、軍事戦略に関する情報を送ることができるのだ。
実際には、軍事利用されている通信衛星は、今現在もある。しかし、静止軌道上にある通信衛星の場合は、軍事展開する地域が限定される。周回する通信衛星の活用はもちろん過去から現在もあるが、やはりリアルタイム性に課題があるのだろう。
軍事利用としての課題
Starlink計画には、軍事利用としてはまだ課題も多いようだ。軍事ネットワークとして活用するとなれば、通信の信頼性と品質が高くなければならないだろう。重要な時に通信が途切れたり、なりすまし、スプーフィング、ジャミングなどセキュリティー上堅牢でなくてはならない。現時点では、この信頼性と脆弱性が問題となっているという報道がある。この点は、米陸軍の上層部も指摘している。今後は、Space Xと米国軍との共同実験を踏まえて改善していくのだろう。
ニュースのポイント
正直、筆者は、この報道には驚いている。Space Xは、単にStarlink計画を“商用”ビジネスとして様々な市場をまだ途上にある国と地域に組成し拡大していくことに注目していたと考えていた。もちろん、先進国に対しても船舶、航空機、自動車など様々なものがブロードバンド環境の提供の対象にはなっている。しかし、この軍事、安全保障の分野までの活用を視野に入れていたのは驚いている。
一方、少し否定的な言い方もできる。宇宙ビジネスは最終的には、やはり、政府のインフラ事業、軍事利用などでないとやはり事業採算性は合わないのではないかと。
そのような話はさておき、Space Xは、他にも様々な市場や利活用の用途を検討している感じがするのだ。今やロケット分野で、トップ。有人分野でも歴史的快挙を成し遂げようとしている。そして月計画のアルテミス計画でもリーダーシップを発揮している。今後の動向に注力したい。