海上からのロケット打ち上げビジネスの勝算は? Astroceanが海上から小型ロケットの打上げ成功

2020年2月24日、日本のロケットベンチャー企業 Astrocean が、茨城県沖の海上から小型ロケットの打ち上げを行い成功したと報じられました。今回打ち上げられたのは、筑波大学の全長3mの小型ロケットで、高度3kmに達しています。

Astrocean とは

Astrocean は、海の上からロケットを打ち上げるサービスを展開しようとしている企業です。すでに2019年3月と11月にこれまで2回の小型ロケット打ち上げを実施しています。具体的には、洋上に Astrocean nano という8m×8mの大きさのフロートの中央にロケットのロンチパッドを設置して、打ち上げるという方法を用いています。
 
このAstrocean nanoは、Astrocean、千葉工業大学、大林組で共同開発した組み立て式洋上打上げ場です。プレスリリース)。また、宇宙ビジネスに力を入れている茨城県が積極的に Astrocean を支援しています。
 

海上からのロケット打ち上げ動向

世界で有名なところでは Sea Launch という企業があります。Sea Launch は、1995年に米国のボーイング、ロシアのエネルギア、ノルウェーのアーカー・クバナー、ウクライナのユージュノエ設計局の共同出資により設立された企業です。1999年から船である打ち上げプラットフォーム、オーシャンオデッセーにて打ち上げを開始し、Intelsat や Eutelsat など数々の大型衛星の打ち上げに成功してきました。
 
しかし、2009年に経営破綻しています。理由は2007年の打ち上げ失敗に起因していると言われています。NSS-8 という大型衛星を搭載したゼニット3SLロケットが、オーシャンオデッセーの発射台で爆発してしまったのです。それによって、大切な船であるオーシャンオデッセーは大規模な損傷を負い、修理に1年間を要してしまいました。その間打ち上げ事業が停止することにより経営破綻を余儀なくされました。その後は、ロシアのS7グループが買取り、傘下に入っています。

また、中国の国家航天局も海上からの長征ロケット打ち上げを実施して成功しています。
 

海上打上げ方式の課題とメリット

Sea Launch が経営破綻した時に、海上からのロケット打ち上げは、うまく行かないのではないかという議論がありました。しかし、海上打ち上げの方式がダメなのではなくて、船という海上プラットフォームが損傷した場合のリカバリー策、海上プラットフォームの損傷しにくい構造設計の検討など、その辺りがしっかりと考慮されている必要があのではないでしょうか。
 
海上からのロケット打ち上げは、打ち上げに最適な天候や場所へ「移動できる」というメリットがあります。このような点をしっかりと構築してくことが重要ではないでしょうか。