Blue Origin ロケットエンジン工場完成から見える今後のロケット市場とは?

2020年2月17日、Blue Originは、米国アラバマ州のハンツビルに大規模なロケットエンジン工場が完成したと報じました(ニュースリリース)。
 

Blue Originとは

もうBlue Originを知らない読者は少ないのではないでしょうか。Amazonの創業者でもあるジェフベゾスがBlue Originの創業者です。現在のCEOはボブスミス氏。2020年1月6日には、米国ワシントン州のケントに新しくヘッドクオーターをR&D施設を移転したばかりです。
 
Blue Originは宇宙旅行とロケット開発、ロンチサービスを計画する宇宙ベンチャー企業です。サブオービタル宇宙旅行用としてのNew Shepardや超大型ロケットであるNew Glennなどを手掛けています。
 

新しい工場で作るロケットエンジン

Blue Originが整備した新しいロケットエンジン工場とはどんな工場でしょうか。この工場は$200M(約200億円)を投じて整備され、300名以上の従業員で稼働する予定です。主にBE-4、BE-3Uエンジンを作るとされており、1年間で42個のエンジンを高頻度で製造することができるそうです。

BE-4 BE-3エンジンが活躍する分野

BE-4(ブルーエンジン-4)は、ULA社(Boeing社とLockheed Martinの合弁会社)の新型機であるバルカンロケットの第1段エンジンとして使用される予定です。これは、第1段部分を打ち上げ後にパラシュート落下中をUAVで回収する計画で2021年に打ち上げを目指しています(ULAホームページ バルカンロケット)。また、New Glennロケットの第1段部分のエンジンにも使われる予定です(Blue originホームページ New Glenn)。

BE-3Uも、New Glennロケットの上段部分に使われるエンジンです。New Glennは、アポロ計画にも使われたサターンロケット級の超大型ロケットであり、月面探査、月旅行、惑星移住、衛星の大型化への対応などに対応することが計画されています。
 

ロケット打上げ需要の拡大

従来からロケットエンジン工場は多く存在していますが、1年間に42台ものエンジンを製造できるハイプロダクションな製造設備が世界に存在していたでしょうか。
 
この工場建設から言えることは、Blue Originはこれだけのロケット打上げ需要を見込んでいるということです。大規模衛星のコンステレーション計画、宇宙旅行や、少し未来の惑星資源探査、惑星移住というニーズがあるからだと考えられます。

需要拡大によるロケットビジネスの変化

このような工場により、ロケットのエンジン製造工程は効率化されコスト削減策が進むことも予想されます。それに合わせてロケット打ち上げコストも安くなり、気軽にロケット打ち上げができる価格帯まで下がる可能性があります。
 

まとめ

他にも、ロケットエンジンを他社のロケットロンチサービス企業に販売するというサプライチェーン等、従来なかった動きも多く出てきています。New Spaceのプレイヤーは、どんどん宇宙ビジネスに技術だけでなくサプライチェーンも含めて、様々なところに新しい風をふかせています。