宇宙ビジネスこれからどうなる ~宇宙旅行、軌道上衛星、惑星資源探査、惑星移住~

SFの世界で夢に見てきた宇宙ビジネスの分野

宇宙ビジネスで一般の方が特に興味を持っているのは、宇宙旅行、軌道上衛星ビジネス、惑星資源探査、惑星移住についてのように感じている。なぜなら現在の宇宙ビジネスで盛り上りを見せているロケットロンチや衛星製造、衛星データ等は、主にB2Bビジネスであり消費者(Consumer)が直接関わりの少ないビジネスであり、遠く感じてしまうことが理由の一つではないだろうか。
 
そのため、宇宙旅行、軌道上衛星、惑星資源探査、惑星移住は、いつ実現するか不確定性の高いビジネスであるが、B2(B2)Cのビジネスが関わっていることもあり一般の読者には人気が高い領域になっているようだ。

夢と創造の溢れる領域

人気が高いのには他の側面もあり、それは「未来型」であることだ。つまり「夢」があるということとほぼ同義といえるのではないか。まだ人類が“想像(イマジネーション)”している段階であり、これからこの“想像(イマジネーション)”を創造(クリエーション)していく世界だからだ。よくSFの小説や映画、そしてアニメにも登場し、エンターテインメントとの親和性も高いのも特徴だ。
 
しかし、そのような“想像(イマジネーション)”の世界もそれほど遠い未来ではない。SFの世界で描かれていた世界が現実(リアル)のものになっている、もしくはなりつつあるのだ。少なくとも、New Spaceを牽引する民間企業が着々と準備を進めているのだ。今回は、この宇宙旅行、軌道上衛星ビジネス、惑星資源探査、惑星移住について、述べていきたいと思う。
 

2030年までに宇宙旅行は一般化する!?

宇宙船
 
「宇宙へはいつ行けるようになるの?。」
 
そんな質問を多く聞く。実は、厳密に言えば宇宙旅行はすでに実現している。“旅行”とは言えないかもしれないが、宇宙へ行くことができる人間が限定されているだけなのだ。その限られている人間とは、難関を突破した至極エリートな宇宙飛行士たちだ。
 
では、なぜ宇宙飛行士しか宇宙へと行くことができないのだろうか。それは、宇宙へ行くには数多くのリスクがあるからだ。この場合のリスクとは危険と言っていい。その危険が多すぎるため、いつ何時も的確に迅速に且つ冷静に対応する必要がある。
 
そのため、膨大な知識量、死に直面した時でも冷静にいられる強靭なメンタル、的確で迅速な判断力、どんな環境下でも生き延びることができるタフさなど様々な特殊能力が必要なのだ。

「それじゃ自分は宇宙なんて行けないじゃん!」という読者もいることだろう。しかし、心配する程の事ではない。宇宙飛行士が宇宙へ行くのは、特殊なミッションがあるためだ。宇宙空間で様々な実験などを行うために彼らは宇宙に行く。しかし、一般の宇宙旅行者はそんな特殊なミッションがあるわけではないので、宇宙飛行士程の特殊能力は必要としないのだ。
 

2020年時点の宇宙旅行

宇宙旅行は、どのような段階にきているのだろうか。宇宙旅行を計画するベンチャー企業が出てきて、ようやく民間ビジネスとしての実を結ぶ段階にきている。例えば、Virgin Galactic、Blue Origin、SpaceX、Reaction Engine、PDエアロスペースなどが代表的なベンチャー企業だ。
 
彼らは、サブオービタルフライトという宇宙旅行を実現しようとしている。高度100km以上と定義される宇宙に、数分間滞在しそのまま地球に戻ってくる弾丸旅行だ。正直、もう実現できる段階まできているといっても良いが、所々で失敗を繰り返してしまっているのも実情だ。
 
搭乗する人に最大3Gの加速度がかかる。これが問題となっている。若く健康体の人であれば良いが、病弱な方、歳老いた方等は少し過酷な環境かもしれない。そのため、Blue Abysというイギリスの会社が宇宙旅行者用の訓練ビジネスを開始していたりもする。
 
宇宙ホテルというビジネスもある。これも既に実現されている。例えば、国際宇宙ステーションISSは良い例だ。ロシアのソユーズなどの大型ロケットなどの先端に宇宙旅行者を搭乗させ、宇宙ホテルまで輸送するのだ。そしてある一定期間宇宙ホテルに滞在するというものだ。しかし、不特定多数の一般人を対象とする民間ビジネスとなるとまだ課題がある。そう、サブオービタルビジネスで述べたことと同じだ。
 

宇宙旅行ビジネスのこれから

さて、読者にここで考えてもらいたいことがある。
 
宇宙旅行、宇宙ホテルビジネスを考えたときに、それに付随するビジネスが多く考えられる。
 
さて何だろうか…
 
例えば、宇宙食、宇宙服、エンターテインメント、などがあるだろう。つまり宇宙における衣食住をイメージしてもらうとわかりやすい。宇宙飛行士は、特殊なミッションをするために宇宙へと送り出されたが、衣食住も簡素化され必要最低限なものになって居る。しかし民間ビジネスとしては「必要最低限のクオリティ」ではとてもまずい。つまりこの点に多くのビジネスチャンスがあるのである。
  
このように、宇宙旅行ビジネスは、多種多様な民間企業が参入できる余地が多い。そう考えると、富裕層向けだったビジネスは、サービスの多様化、効率化が図られ、価格はグッと下がるだろう。そして、2030年頃までには、今海外旅行で飛行機に乗ると同じ感覚で、宇宙旅行も普及していくのではないだろうか。
 
宇宙旅行宇宙旅行の未来像

 

軌道上衛星ビジネスのポテンシャルは無限大

衛星コンステレーション
 
突然「軌道上衛星ビジネス」と聞いて驚かれたと思う。軌道上衛星ビジネスとは、ここでは地球の周りの宇宙空間で衛星によって行われるビジネスと定義したい。例えば、デブリ除去衛星、流れ星衛星、広告衛星、他衛星修理・組み立て衛星、燃料充填衛星などだ。
 
従来のOld Spaceの衛星は、リモートセンシング 衛星、測位衛星、通信衛星など、地球の周りを周回しながら地球に対して情報を送受信するという位置付けが主だったが、New Spaceの時代は、そのカテゴリーを逸脱する衛星が多く出てきている
 
ではこの分野の課題は何だろうか。正直なところ、課題があまり見当たらない。というよりもこの領域はアイデア勝負のところがある。そしてOld Spaceの時代になかったアイデアなので、人類として初めての試みとなるのだ。このアイデアが技術的にフィージブルなのか、参入障壁が築けるのかどうかが、勝負の分かれ目になるだろう。
 

軌道上衛星ビジネスのこれから

これから軌道上衛星ビジネスは、どうなるだろうか。繰り返しになるが、多くのアイデアが創出されるだろう。そして、軌道上に多種多様なサービスを行う衛星が製造されることだろう。そしてそのようなサービスが創出されるたびに、国内外での法整備が新たに作られ、ルール作りも行われるだろう。
  

まだまだ手探り段階の惑星資源探査

惑星探査
 
地球に一番近い惑星といえば、月、そして火星だろう。人類はまず最初にこの月と火星を目指している。では、なぜ惑星資源探査ビジネスを計画する企業がいるのだろうか。理由は、大きく3つあると考えている。

惑星の独占権

1つ目は、惑星の地の独占権の獲得だ。土地を独占することで、資源を独占したり、この惑星でしかできないことを独占したり様々な独占権を得ることができるという目論見だ。しかしながら、議論が尽きないのが、国内外の法規制だろう。もちろん宇宙条約上でも惑星は、みんなの資源となっている。果たしてこのような権利を主張することが可能なのだろうか。
 
地球上で多くの人が住んでいる。その場所の土地を購入した人もいれば借用している人もいるだろう。その土地は、大昔に遡れば元々は誰のものでもなかったはずだ。しかし長い歴史を経て、今のような財産の権利が発生している。将来、他の惑星でもそのようなことが起きるだろうと感じている。もちろん国家間の利害関係が原因で衝突することすらあり得るだろう。

新しいマーケットへの足掛かり

2つ目は、惑星移住ビジネスへとつなげるためだ。次の節で述べる惑星移住ビジネスは、人が惑星の地もしくは惑星の上空に住むことで派生するビジネスのことだ。人が住むためには、必要不可欠なものがたくさんある。

この一つにエネルギー源があるだろう。このエネルギー源をいち早く見つけることができれば、それは、企業にとって大きなアドバンテージなる。1つ目の理由と重複する点はあるが、例えば、資源として水があったとしよう。人類が生きていくために必要不可欠なものであるし、また水から水素と酸素も作ることができる。このような大きなメリットがあるのだ。

夢とロマン

3つ目は、だ。人類は、未知の領域に好奇心を駆り立てられる生物だ。未知の領域を知ることで、新しいフィールドがまた生まれるのだ。大航海時代もそうだったのだろう。まだまだ人類が知らないことがあり、知ることで新しいブレークスルーが海出さされるのだ。

惑星資源探査のこれから

少しボジティブに述べてきたが、正直、課題だらけといっても良いかもしれない。
 
例えば、惑星にどこに何がどれくらいあるのか、これが正直まだわかっていない段階であり、議論がなかなか進められない。この調査からすることが先決だろう。
 
コストの試算も難しい。しかし調査するにしても、まだ、民間企業が惑星へとランダーで降り立ち、ローバーを走行させた実績があるのは数社しかいないだろう。しかもローバーも小型であるため、まだまだ調査を大規模に行うこともできない。
 
資源が見つかったとして、例えば、その資源を地球に持ち帰るビジネスも構想としてはある。しかし、持ち帰ることがコスト面などを踏まえてもフィージブルではないのだ。惑星資源探査ビジネスはまだまだこれからなのである。
 

SFの世界が現実味を帯びてきている惑星移住ビジネス

惑星移住
 
惑星移住ビジネスとは何だろうか。筆者は、大きく2つのカテゴリーに分けている。

コロニー

一つ目は、ある惑星の周りを回るコロニーだ。正直、コロニーは宇宙ホテルと同じと思って良い。惑星移住ビジネスも宇宙旅行の延長線上と考えてもらっても大きな誤解はないだろう。宇宙へ人を輸送することに大きな違いはないからだ。
 
しかし大きく違うのはタイムスパンだろう。地球から惑星に向かうのに、どれくらいの時間がかかるだろうか、月、火星、それよりも新宇宙であれば、数時間、数ヶ月、数年という時間がかかる。そのために必要不可欠技術などが多くある。それが現時点の課題の一つだろう。
 
例えば、数年もの長い期間、閉鎖空間に閉じ込められた人は、どうなるだろうか。体積、重量も限定された宇宙輸送機に搭載される食料、医療物資、娯楽などの生活物資はどうするのかなどであろう。
 
例えばSpace Worksというベンチャー企業は、NASAとの共同研究で、人工冬眠技術を開発している。現在までに人を1週間であれば冬眠状態にすることに成功しているようだ。冬眠状態にすれば、その間、人は活動しなくなるため、食料が不要になるなど生活物資は必要最低限に抑えられるのだ。そして、病気などのリスクも抑えられ老化までしないという。

また、何年もの時間を要する場所に本当にコロニーを造ることができるのだろうか。一度に輸送できる資材の量も限られるため、何回、そして何年の時間が建設に要されるだろうか。いくらコストがかかるだろうか。
 

惑星移住

もう一つのカテゴリは、惑星の地に降り立ち、そこに住むことだ。惑星に移住するとなると、惑星でのインフラが必要だろう。インフラとは、衣食住をするために住居、電気、ガス、水道などのエネルギー源等だ。また、大気がない場合施設全体に与圧機構が必要になる。
 
このような設備を、行くだけで何年もの時間を要する別の惑星に造ることができるだろうか。ロボットで作るのだろうか。人類が作るのだろうか。惑星にある資源を利用する発想もあるが、正直なところ、惑星自体に何があるのかもよくわかっていないのだ。だからこそ惑星資源探査ビジネスが必要不可欠な理由なのだ。
 

惑星移住ビジネスのこれから

このように、惑星資源探査ビジネス、惑星移住ビジネスは、まだ民間企業単独で実施できるビジネス規模ではないことも否定できない。米国航空宇宙局NASAは、アルティメス計画という壮大な計画で月面というフィールドに向けて民間と共に始動している。

しかし、このビジネスに参画して居る企業は、例えばSpaceXやBlue Originなどのそうそうたるベンチャー企業が名を連ねている。彼らが発表したイメージ図を見ると本当にガンダムの世界そのものなのだ。Old Space出身者から見るとフィージビリティーに欠ける点を良い意味で裏切ってくれるこの企業は、きっと上記の課題をクリアしてしまうかもしれない。

惑星移住
惑星資源探査ビジネスと惑星移住ビジネスの未来像