AI×宇宙で世界をひもとく~スペースシフト レーダー衛星データ商品説明会~

2020年1月29日(水)に行われた「AI×宇宙で世界をひもとく~スペースシフト レーダー衛星データ商品説明会~」に参加してきました。

スペースシフトは、衛星データを活用したビジネスを提案する日本の宇宙ベンチャーの一つです。膨大な衛星データとAIを活用してよりよい社会を実現するために、データ分析やソフトウェア開発を行い、顧客のビジネス発展につなげようとしている企業です。

今回のセミナーは下記のプログラムで行われました。注目される衛星データビジネスの実態と、具体的なサービスについて触れることができる構成となっていました。

■プログラム
・13:00~13:40 基調講演
「衛星データ利活用・新時代~宇宙ビジネスの最前線」
サテライトビジネスネットワーク 代表 葛岡 成樹氏
・13:40~14:20 商品説明会
「国土をミリ単位で見える化する衛星データ商品説明」
スペースシフト 金本 成生氏
・14:20~14:50 質疑・応答

基調講演 衛星データ利活用・新時代~宇宙ビジネスの最前線

サテライトビジネスネットワーク代表の葛岡成樹氏が、宇宙を活用するビジネスが来ている現状と、宇宙ビジネスを始めるにあたり何を気を付けたらいいのかについて話されました。

宇宙を利用するビジネスの時代

以前は宇宙開発(スペースデベロップメント)がメインだったが、いまは宇宙ビジネス(スペースビジネス)という言葉を使うことが多くなってきた。宇宙というカテゴリーが、サイエンスの下ではなく、エコノミーの下にはいってきており、宇宙はお金を稼ぐ場所だという認識が世界的に広まってきている。

さらに、ロケットなどの物を作らなくても、サービス・利用をビジネスにしていくことができるようになっているのが今の宇宙産業だとしています。宇宙産業の市場規模の中でも、ロケットや人工衛星を「活用したサービス」でお金が動いており、実際に身近なところでも下記のようなサービスが実現しています。

・衛星放送
・グーグルアース
・ポケモンGO
etc…

さらに、衛星データ活用という面では、下記2つの人工衛星の強みが活かせる条件であれば、データに基づいた意思決定、モデルの構築が可能となりビジネスとして成立する可能性が高いとしています。

①広域を一度に観測可能(知らない現象を発見)
②繰り返し観測可能(変化を検知)

研究開発とビジネスの違い

宇宙を従来の研究開発ではなく、ビジネスとして取り組もうとした時に重要なポイントとして下記3点をあげています。

1:確立した技術で新しい利用をする(使えるものは使おう)
今までのお客さんと、違ったお客さんを対象にしたり、ビジネスモデルを変えて違う土俵で何かできないかを考える。
例)キャベツの生育データ
従来は農家や農協をお客にしていたが、広告代理店や料理の元を売っている会社などに変える。
キャベツが安くなる時期予測をもとに、テレビCMなど広告施策に活用。

2:チャンピオンかいつものことか
いつでも同じように結果が出てくるか(再現性があること)や、実現するための制約(どういう時にできて、できないときはいつか)を考える。

3:誰にでもできるのか、誰かと組まないとできないのか
衛星データであれば、画像処理ソフトウエアに衛星画像を入力すると何かしら結果が出てくるが、処理結果の説明ができるかどうか。臨床検査技師(データ解析)と医師(各アプリケーション)の関係のように、エンドユーザーに話ができる人等も必要。

国土をミリ単位で見える化する衛星データ商品説明

スペースシフト代表の金本成生氏が、自社の商品サービスについて紹介されました。衛星データをとりまく環境は、超小型衛星が増えてきた事で、多くのデータが集まってきている。かつ、AIの進化によって人間が気づかない変化もとらえることができるようになってきた。その結果、従来の軍事、災害、都市計画、気象予報などから、マーケティング、エンターテインメント、未来予測などにも活用されるようになってきているとしています。

スペースシフトは、衛星データをお客さんのビジネスに有益な情報を取得できるように処理し課題解決を提案していくサービスを提供しています。具体的には、AIを駆使した衛星データの解析、イタリアのTER-ALTAMIRA社との提携による地表面変動の計測などを行っています。実際の取組事例として、下記のようなケースを紹介しています。

■取組事例
・台風19号水害被害状況の把握(どこが浸水しているか)
・熊本地震前後の土地の沈下・隆起(地震の後に、どう変化しているか)
・関西空港や羽田空港の沈降スピード解析(どこがどのくらい沈んでいるか)
・災害リスクの検討(災害リスクの高い地域を事前に知る、地上計測などと合わせてより高い予測を実現)
・建築物単体の変位検知(タワマンの沈降や傾きなど、いつから、どっちに向かって倒れてるかなども分かる) 
・地下駅工事(工事の影響による周辺の変化をみる)
・インフラのモニタリング(橋、トンネル工事など、工事の進捗に合わせて知ることもできる)
・農作物生育状況とTV広告
・海底油田の発見
・新規の建築物自動検知
・人、車、家畜、船舶等の動き

上記のように、大量のデータを取ることで、経済や社会の総量把握、環境への影響などが把握できるようになります。さらに、ドローンなど他のサービスと組み合わせることでさらに可能性や選択肢は広がっていくとしています。

まとめ

衛星データの活用は今後数年でもっと活用しやすく身近なものになってくると思われます。保険や農業など活用が進んでいる業界だけでなく、今はまだ衛星データ活用をビジネスに取入れられない業種や企業の方でも、衛星データを活用したビジネスがどう進化していくのかはリサーチしておいて損はないなと実感しました。