米スペースX、1機あたり1億円へ衛星ライドシェア打上げ価格を値下げ

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米スペースX、1機あたり1億円へ衛星ライドシェア打上げ価格を値下げ

2019年8月29日、米スペースXは、地球観測衛星など小型の人工衛星を複数機ロケットに相乗りさせて打ち上げる「ライドシェア」専用の打ち上げプランの価格を改定した。同社の主力ロケットFalcon 9(ファルコン9)を使い、衛星1機あたりの費用は、200キログラムまでの衛星の場合は100万ドル(約1億円)となった。最初の打上げは2020年3月から始まる。

スペースXのライドシェア打ち上げプランは当初8月6日に発表され、150キログラムまでの衛星の場合は225万ドル(約2億4000万円)300キログラムの衛星は450万ドル(約4億8000万円)からとなっていた。1カ月経たずに価格を改定し、2020年後半からだった打上げ機会を3月開始に早め、回数も大幅に増やした。

ESPAと呼ばれる米軍のロケットで小型衛星を軌道投入する規格化されたアダプターを使用し、15機または24機の衛星を搭載できる。10センチメートル角の規格化された“キューブサット”超小型衛星の場合は、専用のアダプターに収納されて打上げられる。

2020年の打上げ予定
 
2020年の予定では、3月にSSO(太陽同期軌道)への打上げが最初の機会となる。2020年12月まで全12回の打上げ機会があり、10月、12月には2回チャンスがある。目標の軌道はSSOまたはmid-inclination(中程度の軌道傾斜角)となっており、後者の場合は高度などの詳細情報は不明だ。米spacenews.comの報道によれば、スペースXの巨大通信衛星網starlink(スターリンク)との相乗り打上げが設定されているといい、スターリンク衛星が使用する高度500キロメートルの軌道を目指すことになる。

2021年には、17回の打上げを予定しており、2月、4月、8月、12月とほぼ四半期ごとに1回は太陽同期軌道への打上げ機会がある。そのほかはmid-inclinationへの打上げとなる。

新たなライドシェア打上げプランで特徴的な点は、衛星の開発が遅れた場合の救済策が明記してあることだ。衛星開発が間に合わず、次回の打上げ機会へ延期したい場合は、打上げ価格の10パーセントを再予約手数料として支払うことで打上げ費用を次回へ繰り越すことができるという。

実際に、2018年12月にファルコン9ロケットで64機の超小型衛星を軌道投入した初のライドシェア打上げの際には、当初70機以上とされた搭載衛星のいくつかが間に合わず、ダミーマスに置き換えられた。このときはライドシェア打上げを募集した打上げコーディネーターのスペースフライト社が調整にあたったとみられる。延期の際の追加コストを可視化しておくことで、衛星の開発中に遅延が生じても衛星業者が安心してロケットを調達でき、意欲を削がないようにすると考えられる。

また、カリフォルニア州のスタートアップ企業Momentus(モーメンタス)は、「軌道シャトル」と呼ばれる軌道間輸送サービスを開始すると発表した。多くの衛星を一度に搭載するライドシェア打上げの場合、ロケットで到達する軌道は衛星のミッションとは異なる可能性がある。衛星側で自前のエンジンを噴射して目標の軌道まで移動する必要があるが、ライドシェア打上げを利用する小型の衛星の場合、エンジン搭載は難しいこともある。そこで、衛星の軌道を変更し、ミッションに沿った軌道へ届ける「軌道間輸送機」の需要が出てくる。

モーメンタスによる軌道間輸送機のイメージ

モーメンタスはこの軌道間輸送をサービスとする企業だ。SpaceXのライドシェア打上げの最初の顧客として契約するとともに、最大250キログラムの衛星を任意の軌道へ届ける「Vigoride」の提供を行う。「水プラズマ推進」と呼ばれる、マイクロ波で推進剤の水をプラズマ化し高速で噴出するエンジンを使用する。

スペースXが矢継ぎ早にライドシェア打上げプランを打ち出す背景には、増加する小型衛星打ち上げ需要がある。スペースXは、ライドシェア打上げプランを発表した後に予想以上に多くの反響や要望があったといい、打上げ機会を求める衛星事業者が相当数あったと見られる。高頻度で打上げ可能であることを実証しているスペースXならではの反響だろう。こうした需要に応えて、米連邦通信委員会(FCC)は、重量180キログラムまでの小型衛星の打ち上げ申請手続きを簡略化し、申請費用を下げている。スペースデブリ化対策などの点で規制が厳しくなった部分もあるが、アメリカは国を上げて小型衛星開発を後押しする方向だ。

とはいえ、世界で70社以上といわれる小型衛星専用のロケット“マイクロランチャー”の開発企業からすれば、高頻度で低価格のライドシェアは脅威になりうる。月に1回以上のチャンスがあり、衛星分離後の軌道調整も可能となれば、ライドシェアの弱点であるタイミングを選べないことや目標の軌道が衛星側と合わないといったデメリットは小さくなる。「マイクロランチャーは任意のタイミングで任意の軌道に、ライドシェアは大型コンステレーションの構築」というように住み分けが可能なのか、打上げサービスの変容を注視していく必要がある。

取材・文/秋山文野

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