「きぼう」完成・「こうのとり」初号機打上げ10周年記念イベント「近未来宇宙予測カイギ」

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2019.8.31セミナー

「きぼう」完成・「こうのとり」初号機打上げ10周年記念イベント「近未来宇宙予測カイギ」

2019年8月30日にJAXAが主催した「きぼう」完成・「こうのとり」初号機打上げ10周年記念イベント「近未来宇宙予測カイギ」に参加してきました。
2019年は、国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟完成と、補給機「こうのとり」初号機打ち上げから10周年という、日本宇宙開発にとっては節目の年です。
日本の宇宙開発を支えてきた「きぼう」と「こうのとり」の今までの功績と、今後の宇宙開発を語るカイギです。

<開催日時>
2019年8月30日(金) 19:00-21:00 (開場18:00予定)

<参加費>
無料

<タイムスケジュール> 
18:00-19:00 受付
19:00-19:05 前座
19:05-19:15 オープニング&ご挨拶
19:15-19:35 基調講演 
19:35-20:10 パネルディスカッション① 「きぼう・こうのとりへの挑戦と未来」
20:10-20:50 パネルディスカッション② 「近未来宇宙予測カイギ」
20:50-20:55 エンディング

前座

まずは、JAXAの宇宙飛行士、星出彰彦氏から簡単に挨拶がありました
今は、人類が月や火星に行く時代に突入している。今後、きぼうやこうのとりのとおして、どのような未来が実現していくかを話し合っていく時間にしたいと話しました。
 

オープニング&ご挨拶

オープニングでは、2名の方がそれぞれの立場におけるきぼうとこうのとりへの期待を話しました。

JAXA 山川氏

今年は世界の宇宙開発にとってはアポロの月面着陸から50年の記念の年。
そして、JAXAにとっても、はやぶさ2が小惑星リュウグウに着陸成功するなどの記念の年になった。
国際宇宙ステーション計画が最初に持ち上がってから30年以上になるプロジェクトが「きぼう」や「こうのとり」のプロジェクトで、今やどちらもISSにとってもなくてはならないものになっている。こうのとりは8号機も9月打上げが予定されており、ISSの運用に役に立っている。
きぼうも民間による利用拡大なども実現しており、今後も利用しやすいようにしていくことで、宇宙ビジネスをしたいと思う方がたくさん出てくるように活動していきたい。

文部科学副大臣 長岡氏

日本は、国際宇宙ステーションの検討・開発段階から世界と一緒に取り組み、たくさんの成果を生み出してきた。
その成果を生み出した「きぼう」と「こうのとり」は今までもこれからもとても意味のあるもの。具体的には下記のような成果を出している。

1:多くの人にとって宇宙が身近なものになった。より多くの人が宇宙に挑戦しやすくなった。
2:スケジュール通りに結果を出すことで、アジア唯一のISS参加国としても日本の宇宙でのプレデンスが高まった。
3:ISS計画をとおして培った経験技術で、新しい取り組みを開始することができるようになった。

文部科学省としても、今後の発展を期待して、一緒に取り組んでいきたい。

基調講演

SNS media&consulting株式会社ファウンダーの堀江貴文氏が、自身の事業と今後の宇宙ビジネスについてを話しました。

自身の会社は、ハイペースで安くロケットを打ち上げることをミッションにして宇宙ビジネスに取り組んでいる。
製造・打上げコストを下げてロケットを作り、打ち上げを行っている。具体的なロケットとして下記2つを紹介している。

・観測ロケットMOMO
・超小型衛星ロケットZERO

自社で製造している液体燃料ロケットは、ゆっくり打ち上がるので、人が乗る場合にも人体への影響が軽減されるなどのメリットがあり、活用の幅も広く見込まれる。
大型化するのも技術的には難しくないので、コストの問題が現時点ではネックになっている。ベンチャーでこうした実現性の高いロケットを作ろうという企業が少ないのが残念と語る。

なぜロケットを作ろうと思ったか

自分がなぜロケットを作ろうと思ったかについても語っている。
生まれたときにはアポロ計画も途中で終わったころだった。子供のころは大人になったら人類は火星とかに行っているだろうと思っていたが、そうなっていなかった。

はじめて宇宙に行ったロケットは、1940年代にドイツが開発したV2ロケットで、70年以上前のロケットですでに宇宙に行くことができている。
そのため、技術的には宇宙にいけるはずなのに、ほとんどに人が行ったことないのはなぜか?。
それはお金の問題で、コストが高いので実現していないのが現実だとしている。

宇宙に行くための輸送手段であるロケットがなかなか安くならないので、自分でやろうとしている。
海外ではIT出身の起業家たちがやっているが、日本に少ないのが残念であるとしている。

なぜ日本はロケットビジネスに最適なのか

日本はロケットを打ち上げるのに適している国であるとしている。
その主な理由として下記を上げている。

・自動車産業でで培ったサプライチェーン
・日本は数少ない鉄が作れる
・世界に通用する素材メーカーがある

上記から、国産でロケットをすべて作ることができることが重要であると主張している。
ロケットビジネスにおける注意点として下記も踏まえて、日本が立地的にも恵まれていることにも触れた。

・武器を載せたら兵器になるため輸出や輸入の問題がある
・北か南か東に打ち上げるしかできない(日本は東にも南にも打ち上げられる射場を持っている)

こうしたビジネスとしても恵まれた条件があることを、多くの企業が認識し、日本の宇宙産業のなかであたらしく挑戦する企業が生まれて欲しいとしている。

パネルディスカッション1「きぼう・こうのとりへの挑戦と未来」

ひとつめのパネルディスカッションでは、「きぼう」と「こうのとり」について、実際に制作した方、現在運用をしている方、利用する方の3人における、いままでとこれからの話です。

【パネリスト】
竹内芳樹氏(三菱重工業株式会社バリューチェーン本部バリューチェーン技術部技術グループ長。きぼうを作った方。)
髙橋智氏(筑波大学医学医療系教授/筑波大学医学医療系トランスボーダー医学研究センター長。きぼうを使っている方。)
筒井史哉氏(JAXA有人宇宙技術部門有人宇宙技術センター長/国際宇宙ステーションプログラムマネージャ。運用している方。)
【モデレーター】
田中直樹氏(ココリコ/ナショジオ オープンキャンパス ナビゲーター)
大塚茂夫氏(ナショナル ジオグラフィック日本版 編集長)

きぼうとこうのとりとは?

まずは「きぼう」と「こうのとり」の概要を簡単に説明がありました。

■きぼう
船内、船外の実験施設として運用されている施設。
人体への宇宙の影響など様々な実験が行われている。

■こうのとり
地上400キロにあり、90分で地球を一周しているISSに物資を運ぶ補給線。
ランデブーキャプチャー方式をはじめて採用。
食料衣類空気などの物資を輸送し、ISSのライフラインとして運用を支える役割をしている。

きぼう実験棟について

Q:日本ならではの特徴は?
A:筒井氏
大きなところでは下記の3つがある。
1:ISS最大の施設
2:ユニークな機能が満載
3:きぼうできしかできない実験ができる(重力関係など)

Q開発の苦労は?
A:竹内氏
国際宇宙ステーションは。有人設備なので、空調や移動するのにどこをつかむのかなど、人が生活するうえで解決しないといけない課題がいくつもあった。
壊れたときやヒューマンエラーがおきたらどうするかなど、何が起きても大丈夫なようにするために、おおくの想定が必要だった。

Q:15ヵ国のプロジェクトなので、開発当初は他国からもいろんな期待があったのでは?
A:筒井氏
最初の段階では、日本がほんとに作れるのかという批判的な意見の方が多かった。
ここまで実績を積んでしっかり使ってもらえることで、ようやく対等に見てもらえるようになったのかなと感じている。

Q:実験棟ということだが、この10年でどんな実験をしてきたのか?
A:高橋氏
細かく言うと言い切れないので、大きく分類すると下記のようなものを行ってきた。
1:宇宙で作ることで、地上よりいいものを作る
2:宇宙で人体や命に起こる影響を調べる(骨や筋肉の影響等)
3:事業者の実験基地として利用してもらう(きぼうからベンチャーが作成した小型衛星を放出する等)

Q:初めてきぼうでおこなった実験はどんなものだった?
A:高橋氏
マウスの飼育装置を使った、宇宙と地上での体への影響を調べる実験だった。
宇宙で35日間飼育したマウスと地上で飼育したマウスを比較し、骨や筋肉量を分析するなど。
(骨は三分の二は無くなる、筋肉も10%減少するなどの結果がでた)

きぼうの実験環境を使うことで、、地上の人の老化を防ぐための実験と、宇宙で暮らす人のための医学を研究することができる。
将来的には、筋肉や骨の減少を防ぐことができる方法などが分かれば、年をとっても体が元気な状態を維持しやすくなるなども可能になるかも。

こうのとりについて

Q:このうとりのすごいところは?
A:竹内氏
3つのポイントがあると思っている。
1:成功率100%
2:世界最大の補給能力(1回で6トン運べる。生鮮食料品もOK)
3:世界に認められた高等技術(ロボットアームでドッキングなど)

現在、HTV-Xを後継として開発中。
輸送量のUP、ISSから月やその先まで運ぶことができるように目指している。
将来的に、単独で有人運用できる可能性も視野に入れている。

Q:「きぼう」「こうのとり」の今後の可能性は?
A:筒井氏
宇宙が人々の身近になるようになればいいと思って運用している。
国際宇宙ステーションがあるあいだに、いままで宇宙と関係なかった人が使ってみようかと思うようにしたい。
地上と宇宙が一体になるような社会にしたい。

Q:きぼうやこうのとりに期待することは?
A:高橋氏
宇宙探査において、月や火星移住は近い将来実現していくことになる。
しかし、月や火星は重力が少ないといった課題もまだある。そのなかで人が健康でいられるために、きぼうをベースに研究を進めていく。

A:竹内氏
作ったものとしては、できるだけ長く沢山使ってもらいたいと思っている。
宇宙旅行にも、きぼうとこうのとりの技術が活用できると思うので、ベンチャー企業の方に今後のサービス開発のためにも使ってもらいたい。

Q:日本の施設がどう活用されて行って欲しいか?
A:筒井氏
宇宙利用の敷居を下げるためのものになってくれればいいと思っている。
利用する人が増えることが大事なので、何かあたらしい利用方法もあればどんどんでてきたらいい
そのためのシステム等も、JAXAも考えていく。

パネルディスカッション2 「近未来宇宙予測カイギ」

今回のイベントのタイトルにもなっているテーマで、宇宙の近未来を、下記の3名が機論をかわしました。

【パネリスト】
堀江貴文氏(SNS media&consulting株式会社ファウンダー)
朴正義氏(株式会社バスキュール 代表取締役 / クリエイティブディレクター)
若田光一氏(JAXA理事/JAXA宇宙飛行士)
【モデレーター】
田中直樹氏(ココリコ/ナショジオ オープンキャンパス ナビゲーター)
サッシャ氏(ラジオDJ/MC)

Q:宇宙に対してどのような想いで事業を行っているか?
A:朴氏
新しいデータがあれば、新しい体験ができないかという発想で事業をしている。
「データ×エンタテインメント」で「データテインメント」として、リアルな宇宙を楽しめるような事業を行っている。

A:堀江氏
日本政府も調達の仕組みを変えたりなどを行い、宇宙に本気で取り組んでいこうとしている。
一般の人は宇宙を手が届かない夢の世界と思っているけど、自分たちも宇宙に関われると思うことが大事。
宇宙は夢じゃなくて現実なんだと強いメッセージを発信していくと語った。

また、現在の宇宙ビジネスにおいて、インターネットとの比較から、宇宙ビジネスが発展するためのキーワードとして下記2つをあげている。
・水平分業
インターネットの業界では、水平分業がされているので、イノベーション・改革のスピードがはやい。
それに対して、垂直統合は発展のスピードが遅く、いままでの宇宙ビジネスはこれにあたるとしている。
・オープンイノベーション
世界的に技術などが広がることで、より効率よく発展が進むとしている

さらに、宇宙ビジネス最大のボトルネックを下記としている
・輸送システムが高いから(コストがかかりすぎるから、広がらないし身近にならない)

インターネットは、機器の充実と、プロバイダが通信費を安く提供したことで普及したとしている。
現在の宇宙もインターネットと同じで、安く提供することが実現した段階で、ものすごい勢いで急速に普及すると予想している。
堀江氏は自身の会社で、それと同じことをやろうとしているのだと語る。

Q:JAXAの目線では、宇宙ビジネスにどう期待している
A:若田氏
宇宙はすでに身近なものになっていると思う。
宇宙ビジネスで提供できることを大きく分けると、下記3つになる。
1:人類の活動領域を広げる
2:宇宙を楽しむ
3:地球上の課題を解決する

上記においても、これまでの政府が行っていたプログラムとちがった展開を、民間企業がみせてくれている。
堀江氏や朴氏の事業もまさにその一例。

A:朴氏
宇宙を楽しむというコンセプトで、新しく「宇宙メディア事業」というプロジェクトを立ち上げることになった。
2020年春には、宇宙空間から地球に配信するメディアをやりたい。

A:堀江氏
スペースシャトル終わっていまはソユーズしか宇宙への輸送をやってないので、ISSいくのに70億くらいかかる。
いまの宇宙ビジネスは、本当にインターネットの黎明期に似ている。
インターネットでアメリカとつながっているのを喜んでいたのに似ていて、宇宙とつながっていることに楽しんでいるようなもの。

何に使うのとかは心配してなくて、何年後かに面白い人が本気で考えたら勝手にいろいろでてくると考えている。

Q:宇宙ビジネスがどうなるか?
A:堀江氏
アメリカで宇宙ビジネスが加速している理由は、政府がお金の流れを変えたらだと思う。
開発費の前払いなどをしてくれたりするので、ベンチャーも行動しやすいのだと感じている。

A:若田氏
JAXAも民間の事業者に参入してもらいやすいように取り組んでいる。
施策によってはNASAよりも早くやっているものもあるので、活用して欲しい。

Q:宇宙プレイヤーにはどんなひとが向いているか?
A:朴氏
正直、宇宙がどうなるかを考えても、きっとわからない。
「こうなったらいいな、楽しそうだな」という気持ちで、やってみようと思える人が向いていると思う。
宇宙のことなんか知らない方が、面白いことやれるんじゃないか。

A:堀江氏
細かい話していくと、自動車は今後ガソリンからモーターに変わっていく。
すると自動車のエンジンやってた人の仕事がなくなっていく。
その人たちが、いまのスキルを活かそうとすると、宇宙のロケット等でしか活かせなくなるのではないか。
そうした産業の変化によっても、宇宙に流れる人が出てくる。

Q:本日の締めの一言
A:若田氏
皆の生活がもっと宇宙に結び付くのではと感じてもらい、じっさいに宇宙に関わる人が増えることを期待している。

まとめ

今回のパネルディスカッションは、宇宙を専門でやっている方々の話と、専門ではなかったけど宇宙をテーマにビジネスをしている方々の話が聞けてとても興味深かったと思います。宇宙を意識せず、単純にビジネスとして見たときに、堀江氏の言うようにコストが下がったときに一気に広がるという予想はとても説得力があると感じました。

コストが下げられるまでの水準に到達するために、まだまだ技術の発展やアイデアが必要なことは間違いないので、SpaceBizとしても今後の活動にいっそう邁進していこうと思えたカイギでした。

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