宇宙ビジネス第三の波(齊田 興哉 著)の書評・感想 – おすすめ宇宙ビジネス本4
今回は『宇宙ビジネス第三の波』(齊田 興哉著 日刊工業新聞社)をご紹介します。
著者は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(以下JAXA)の開発員として、人工衛星の開発プロジェクトに従事。JAXA退職後は、多種多様な業界のコンサルティングを経験。専門は、人工衛星など宇宙事業に係るPFI事業なので、宇宙ビジネス全般に精通しております。著作の中は、大きく3つのPartで構成されています。
Part1 各国の宇宙活動について
Part1では、Old SpaceからNew Spaceまでの宇宙ビジネスの歴史や各国の宇宙活動法などを紹介しています。米国政府が、惑星資源探査事業という民間ビジネスに許可を与えたのは面白い出来事です。日本の宇宙ビジネスは圧倒的に官需中心なので、宇宙産業ビジョン2030等の政策で民間企業の参画を促している現状もお伝えしています。日本の宇宙ビジネスの課題も明確に把握しており、「日本の長所を伸ばして、課題を乗り越えるアイデア」は素晴らしい提言だと思います。
Part2 New Spaceについて
Part2では、宇宙ビジネス第三の波として、多くの産業の民間企業が参入し、ビジネスの多様化を生み出すNew Spaceを説明しています。やはり、New Spaceの花形は小型衛星ビジネスです。米国のOne Web社は低軌道に約4000機の小型衛星を打ち上げて、大規模なコンステレーションを形成し、世界のどこからでもインターネットに接続出来る事業を目指しているようです。大手農機メーカーは、測位衛星から測位信号を受信し、農機の正確な位置を把握する自動運転農機の開発をしています。人工衛星の利活用も異分野に広がってきています。
Part3 New Spaceのビジネスモデル
Part3では、New Spaceのビジネスモデルをピクト図を参考に可視化しています。多様化する中で、市場を支配する価格破壊型ビジネスモデル(SpaceXなど),ブルーオーシャン戦略ビジネスモデル(アストロスケール、ALE、Space VRなど),広告塔での収益を狙うビジネスモデル(惑星探査事業起業など)等具体的に教えていただけるのは大変参考になります。宇宙ビジネスへの参入の留意点も、経験豊富なコンサルタントならではの貴重なアドバイスとなっております。
まとめ
宇宙ビジネスに関心のある方は、まずこの著書から読み始めると良いでしょう。完成度が高い書物なので、初級者でも上級者でも必読の書です。