いばらき宇宙ビジネスサミット2019

2019年8月5日に行われた「いばらき宇宙ビジネスサミット」に参加してきました。
茨城県では、2018年に「いばらき宇宙ビジネス創出拠点プロジェクト」を立ち上げています。自治体としては全国初で、JAXAとも連携して宇宙ビジネスに特化した活動を行っています。SpaceBizでは、午前中に行われたシンポジウムに参加してきたので、簡単に内容をご紹介したいと思います。

サミットのスケジュール
・シンポジウム
■10:00~
開会挨拶
■10:05~10:45
基調講演 若田 光一氏 JAXA 理事・宇宙飛行士
■10:45~12:15
パネルディスカッション「宇宙×スポーツ」
パネリスト
落合 陽一氏 メディアアーティスト、筑波大学 准教授
古川 拓生氏 筑波大学 体育系 准教授
川﨑 吾一氏 合同会社 Yspace 共同代表
金沢 慧氏 データスタジアム株式会社 アナリスト
モデレーター
神武 直彦氏 慶應義塾大学大学院、システムデザイン・マネジメント研究科 教授

■~12:45
名刺交換

・セミナー
■13:30~16:00
衛星データに関する講習会・操作実習 誰でもわかる衛星データセミナー ~操作実習付き!~

■13:30~16:00
専門家への個別相談

・マッチング
■13:30~17:00
S-Matching with 国研&ベンチャー

開会挨拶

大井川知事が、茨城県が持つ宇宙ビジネスへの思いを話しました。新しいことにはフロンティアが必要で、茨城県がそれになるという強い決意を見せています。そのために、JAXAが県内にいる強みも生かしてたくさんの支援に取り組んでいくとしています。

基調講演

基調講演では、JAXA理事/宇宙飛行士の若田光一氏が、現在と今後のJAXAの活動について話しました。

JAXAが運用中のプログラム

現在行っているプロジェクトとして、下記を紹介しています。

■こうのとり7号機
ISS(国際宇宙ステーション)に物資を供給するのが役割。
たくさんの物資をのせて種子島からH2Aロケットで打ち上げられ、45日間ISSに滞在する。その後、不要な物資を回収して帰ってくるということをしている。打ち上げの成功率は100%ですでに7回成功している。ISSの運用に不可欠なものになっている。

■小惑星探査機 はやぶさ2
小惑星の土壌サンプルを地球に持ち帰って分析をするために運用されている。2014年に打ち上げられ、小惑星リュウグウへ2回着陸成功している。宇宙の歴史と生命の謎をさぐる夢のある壮大なプロジェクト。現在打ち上げられているはやぶさ2は、2020年末に地球に帰還する予定。

■H3ロケット
現在、日本の主力であるH2Aロケットの後継機。三菱重工業と共同開発中で、2020年の打上げを予定してすすめている。
従来のものと比べて、価格、維持コストを半減することを目的に開発をしている。ロケット市場で求められる低価格化などを実現させることで国際競争力をあげる目的がある。

■宇宙探査の方向性
宇宙にでていくための宇宙探査としては、アポロの時代と違うこととして下記3点を強調している。
1:月に長期的に滞在する(月での生活を実現させる)
2:2火星を目指している(月だけでなくその先にある火星での生活も目指す)
3:民間との協力が必須(国だけでなく民間とお互い強みを生かして取り組む)

新宇宙ゲートウェイを活用して、JAXAとしても得意な技術分野で、世界に貢献していく。
具体的には、月面の有人拠点、月での生活支援、新宇宙への拠点がある。

■革新的衛星技術実証プログラム
民間や大学が製造した超小型衛星を活用して、さまざまな実証実験を行うプログラム。技術の発展や市場への参入を促進するなどの目的がる。

世界の宇宙産業

世界と日本の宇宙産業についても触れています。

■世界の宇宙産業
今後世界では、欧米ロを中心に年々増加を続け、成長率2%くらいで市場が成長していくと予想されている。
また、世界の新たなプレイヤーとして下記を紹介している。

ONE WEB(コンステレーション)
SPACEX(ロケット打上げ)
ブルーオリジン(宇宙旅行)
ispace(月面資源探査)

あわせて、官が民をリードする時代は終わり、世界中で民が主導する状態が進んでいることも強調している。

■産業信仰に関する日本政府の政策
そんな中、日本でも政府、宇宙ビジネスの成長支援に取り組んでいる
100億円のリスクマネー供給が公表されたり、J-sparkなどの支援が行われている。すでに日本固有のベンチャーが育ってきており、
JAXA発のベンチャーも6社認定されている(2019年8月)。

■JAXAの今後
今後のJAXAでは、宇宙は世界を変えることができると信じ下記等に取り組んでいく。
新しいビジネスを多くの事業者と一緒に作っていきたいとしている。

・きぼう利用事業の民間による事業自立化への取り組み
・宇宙探査イノベーションハブ(探る・建てる・活動する・作る・住む) 
・小型化軽量化など日本の技術を活用 
・地上と月面両方の競争力を高めることにつながる
・トヨタとのローバー政策など異業種とも実績を作っている(トヨタの次世代燃料技術を活用)
・宇宙イノベーションパートナーシップ(アバター、食、健康など)
 

パネルディスカッション

今回のパネルディスカッションでは、「宇宙×スポーツ」をテーマに討論が行われました。

Q:新しいものにチャレンジをする時に大事な事は。
金沢氏
すぐにお金にならないけど、やってみたいと思う人がたくさんいることを探していく。
川崎氏
ユーザーの需要とテクノロジーの流れを読むこと。マネタイズすることが事業では大切なので、ユーザーが何を望んでいるかをメインにして考える。
古川市
人の固定観念をどう壊すかが大事。いままでの常識、その時それをやっている人の固定観念が常識になっている。突飛な発想と、データを取りながらなど安全に既存のものを壊していくことが大事。
落合氏
どこまでがニーズがあるかを見極めることが大事。課題を相手に聞くことや、見ることが重要なので、それを理解する時間をとることも重要。現場に行ってまきこまれて初めてわかることを、時間や手間をおしまずにやらないといけない。自分の守備範囲から外に出ていくことが大事。自分にルーツのないことをだれかとやろうとしてもコラボできない。専門家でなくとも自分なりにそれに費やした時間がないと展開していかない。

Q:スポーツと宇宙・テクノロジーが今後どう組み合わさっていくか。
金沢氏
ロボットとの融合などができれば今までにない、多くの人が楽しめるものが生み出せるかもしれない。
川崎市
スポーツや医学の分野、障碍者の方などのところに、宇宙側から入り込んでいくことが必要。
古川氏
自分のやっていることだけやっていては新しいものは生まれない。コラボ、融合をしていくとアイデアがひろがる。自分の専門に時間をかけている人が多いので、その人たちをつなげられる人が出てくるといい。

まとめ

パネルディスカッションは、パネラーの方がみんな異分野の方だったので、かみ合わない部分もあったように思います。でも、その溝やギャップが重要な気がしました。かみ合わない部分が何なのかを言語化できたら、今までにないものが生まれるのではないかと感じた。

全体的には、茨城県としての方向性の確認や企画の盛り上がり、一体感を感じられるサミットだったと思います。