衛星データ活用セミナー 宇宙×空間情報の利用による新たなイノベーション

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2019.5.18セミナー

衛星データ活用セミナー 宇宙×空間情報の利用による新たなイノベーション

2019年5月17日に株式会社パスコが主催する「衛星データ活用セミナー 宇宙×空間情報の利用による新たなイノベーション」が開催されました。
 
地球を観測する沢山の衛星が打ち上げられています。その衛星からおおくのデータを取得して、一般の人や企業でも利用できるようになってきています。
 
今までは限られた一部の人下使えなかった衛星データですが、少しづつ一般企業の活動の中にも利用され始めてきています。本セミナーでは、衛星データをどうやって使っていくかについて、最新の情報や事例をご紹介する内容です。
 
開催概要
2019年5月17日(金)13:00 – 17:00
開催場所:東京都中央区日本橋二丁目5番1号 日本橋高島屋三井ビルディング9階
 
・プログラム
12:00~ 開場・受付開始
13:00~ ご挨拶

第一部
13:05~
【基調講演】超小型衛星が拓く新しい地球観測のビジョン
東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授 中須賀 真一 氏
13:35~
政府衛星の動向と今後の利活用展望
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター センター長 内藤 一郎 氏
14:05~
欧州における衛星利活用最新動向
一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(JSS) 宇宙産業本部 事業推進部 主任研究員 クレイドン・サム 氏

第二部
14:50~
災害廃棄物対策での人工衛星の活用と今後の展望について
環境省 廃棄物適正処理推進課 課長 名倉 良雄 氏
15:20~
鉄塔及び送電線周辺の巡視業務における衛星データ活用の検討
関西電力株式会社 送配電カンパニー 電力システム技術センター 架空送電グループ 案浦 正将 氏
16:00~
トンネル工事における CIM/ICT技術(SAR衛星)の活用事例
株式会社奥村組 土木本部 土木部 i-Construction推進グループ グループ長 宮田 岩往 氏
16:30~
衛星利活用促進の取り組み 
株式会社パスコ 代表取締役社長 島村 秀樹 氏

超小型衛星が拓く新しい地球観測のビジョン

東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授 中須賀 真一 氏が、地球を観測する衛星の現状について話しました。

世界の地球観測衛星のポイント
世界の動向として下記4つを上げています。
1:政府専用衛星の性能向上
2:デュアルユースの高分解能衛星
3:衛星画像のオープン&フリー
4:小型、超小型衛星を利用した民間、大学の参入

人工知能とリモートセンシング
いままでのリモートセンシングは専門家しか扱えないものでした。しかし、人工知能AIの発展によって自動的に必要なデータを取得することなどができるようになり、衛星データを活用する幅が広がってくることになります。異なる画像や、時間の違う画像などを組み合わせたり比較することで、下記のようなことへの利用が始まっています。
・活用の例
鉱脈発見、農作物の収穫予測、ゲリラ豪雨予測、、混雑状況把握、災害発見など

今後は、どんな情報がお金になるのかといったアイデアや、顧客がどんなことをしたいかを分析することが重要になってくるとしています。

■大型衛星と小型衛星の違い

いままでは、大型衛星が宇宙開発の中心になっていました。
大型衛星は下記のような課題があるため、国が主体で、発展スピードも遅く、宇宙利用が広がっていきませんでした。
大型衛星の課題
1機数百億円の莫大なコスト
長期開発
失敗が許されない

しかし、現在では、小型衛星が増えてきて宇宙開発革命が起きています。
小型衛星は、主にベンチャー企業や大学などが参入しています。
小型衛星は大型衛星と比べて下記のような特徴があります。

小型衛星のメリット
コストが低い(数千万~5億円以下。新しいプレーヤーの参入や、利用法が生まれやすい)
短期のライフサイクル(1~2年。大学の研究室で1サイクルを経験できる、投資回収までの時間が短いなど)
衛星システムがシンプル(部品点数が少ない)

上記のような特徴から、小型衛星で出来ることは積極的に実践し、改善をすすめていく流れになっている。
こうした流れの中、教育関連会社の教材や気象予報会社など、いままでの大型衛星ではできなかった多くの使い方が生まれてきている。

小型衛星で何ができるか
1:衛星を分散配置して、頻繁に見る(コンステレーション)
2:複数機による共同ミッション
3:パーソナル衛星、マイ衛星
4:本格的ミッション前の試行実験、実証
5:海外新興国への衛星開発支援

■世界における宇宙産業のフェーズシフト

宇宙産業を下記の4世代に分けています。第四世代にうつることが日本の宇宙産業発展のポイントだとしています。

第一世代:国のお金で国家機関がやる宇宙開発(~1960年代 アメリカ)
第二世代:国のお金で国の期間が一部民間の手を借りて実施(~1980年代)
第三世代:国のお金で民間がロケット、衛星を開発運用(日本はまだここ)
第四世代:民間が民間の投資で衛星、ロケットを開発運用し、政府はそのサービスを購入(アメリカはこれで活性化してる)

超小型衛星の役割
第四世代に移るために、小型衛星を使い、試行錯誤や人材育成、技術の向上を実現することで、「宇宙で何かをやろうと考えるひとの数を増やすこと」が期待されているとしています。

政府衛星の動向と今後の利活用展望

JAXA 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター センター長 内藤 一郎 氏が政府衛星の動向について、日本の地球観測衛星を大きく下記3つに分けたうえで、主に高空間分解能衛星のミッションについて話しました。

高空間分解能衛星(ALOS だいち等) → 防災、災害対策など、地理空間情報の整備など
環境監視衛星 → 気候変動、水循環などを観測する
温室効果ガス観測衛星(GOSAT など) → 二酸化炭素、メタンなどを観測する

先進光学衛星 ALOS-3
現在は、ALOS-2が2014年より運用されていますが、先進光学衛星ALOS-3の運用を2020年に開始する予定です。
目的としては主に下記3つが挙げられています。

防災・災害対策などを含む広義の安全保障(平時の観測と、緊急観測によって被害状況を取得)
地理空間情報の整備、更新(都市計画区域外の基盤地図情報取得など)
民間事業者の活力活用(民間事業者の衛星運用、事業を実施する体制構築)

衛星データの活用例
食料安全保障
海外水稲作付面積地判別(アジア)
水稲等の作付地判別(国内)
筆ポリゴンデータの更新
津波被害域の観測
インフラ点検作業の効率化
など

欧州における衛生利活用最新動向

JSSクレイドン・サム 氏が欧州の最新動向について話しました。

EUの宇宙プログラム
欧州では、社会課題の解決、雇用の拡大と産業の活性化、他国のインフラに依存しない事を目的に、下記3つのプログラムが運用されています。

Copernicus(全地球観測プログラム)
Galileo(全地球航法衛星プログラム)
EGNOS(製紙衛星補償型衛星航法システム)

Copernicus
コペルニクスは欧州委員会の成長総局が監督し、産業・雇用創出と政策支援にフォーカスした公共インフラとして運用されています。
中~低解像度の地球観測衛星データを、主に安全保障や災害への対策等として利用できる。
衛星の継続性を2030年まで保障し、完全なオープンデータポリシーを採用している。

コペルニクスにデータは、大きく下記3つのデータをあつめてデータセットを作っている。
1:センチネルデータ衛星データ
2:欧州宇宙機関ESAや欧州諸国が所有する衛星の他、民間企業の衛星データ
3:現場データ

・データセットの種類は下記6つ
気候モニタリング
大気モニタリング
安全保障モニタリング
陸域モニタリング
緊急管理
海域モニタリング

■DIAS

欧州における衛星データの活用には、下記のようにいくつかの問題点があり、一般のユーザーが扱えなかった。
データアクセスポイントが分散
重い画像のダウンロードに時間がかかる
衛星画像処理ツールを持っていないと加工できない
非常にテクニカルなインターフェイス

そこで、サービスを利用しやすくするために、データアクセスポイントの統合をしたものがDIASです。
無償で使えるサービスと、有償サービスなどがあるが、ポイントとしては下記3つが挙げられている。
1:コペルニクスデータを閲覧、ダウンロード(無料で使いやすい操作で、1カ所からすべてのデータにアクセス)
2:バーチャルマシン(データへのアクセスから処理、販売までできる)
3:マーケットプレイス(世界市場に力作を出展)

これにより、ダウンロードなしでいつでも、どこでも、だれでも衛星データ解析が可能になっている。

衛星の活用事例

民間企業や政府など、宇宙ビジネス以外での衛星データ活用として、下記3つの事例が紹介されました。
すべて既存のビジネスで当たり前になっていたことを、衛星データという視点でより効率化やコスト削減につなげようとしている事例となっています。

災害廃棄物の発生量の推計
衛星データによって、どこにどれくらいの廃棄物があるかをみる。それによって、仮置き場や処分先を迅速に確保することにつながる。

送電線の周辺の巡視作業
ヘリコプターや徒歩で行っている送電線の巡視、点検作業や、鉄塔周辺の地盤監視、市街地の建物変化発見を衛星データで行うことで、コストの削減、予期せぬ労災事故などを減少させる。

トンネル工事のシールド工法における地表面変位測量
シールド工事による地表面への影響を衛星データによって測量することで、私有地や交通量の多い道路など、測量の困難な場所を含め広範囲に測量ができる。

まとめ

衛星データを取得するための衛星自体が、小型化によって大きく変化しているなかで、いままで実現できなかったデータの使い方ができるようになっていると思います。しかし、実際の利用としては防災や農業、漁業といった部分にとどまっているのが現状です。より身近な分野での活用が生まれるように、SpaceBizとしても情報発信を続けていきたいと思います。
 

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