宇宙ビジネス参入における法的留意点・投融資実務・契約実務
2019年4月17日に「宇宙ビジネス参入における法的留意点・投融資実務・契約実務」のセミナーが開催されました。講師の折原康貴氏と鈴木泰治郎氏は、現在、ベーカーマッケンジー法律事務所所属弁護士です。セミナーは、下記の6つの視点から説明されました。
①宇宙ビジネス概要
②宇宙関連法
③宇宙ビジネスに関する法的留意点(技術の保護)
④宇宙ビジネスに対するエクイティファイナンス
⑤宇宙ビジネスに対するデットファイナンス
⑥宇宙ビジネスに関する契約実務
法律的な解釈ですと、難しくなりますので、宇宙活動法とリモートセンシング法や宇宙ビジネスに関するエクイティファイナンス,デットファイナンス,知的財産権,保険実務などの勘所を項目ごとにお伝えします。
①宇宙ビジネス概要
・従来型事業(打上げサービス契約,人工衛星運用事業)
・打上げ施設運営事業(打上げ施設の不足,既存の打上げ施設では規模・コストが合わない)
・リモートセンシング事業(地球観測衛星,リモセン法上の「検出情報」「検出情報電磁的記録」「衛星リモートセンシング記録」の著作権該当性,個人情報の保護)
・宇宙旅行ビジネス(サブオービタル飛行,免責条項の有効性)
・デブリ除去事業(デブリ関連ビジネス,宇宙空間における燃料補給・衛星整備サービス)
・宇宙機器産業(測位衛星を利用した周辺ビジネス)などを解説。
②宇宙関連法
・国際法(宇宙条約,宇宙救助返還協定,宇宙損害責任条約,宇宙物体登録条約,月協定,宇宙の領有禁止原則,スペース・デブリ低減ガイドライン,リモートセンシング原則)
・宇宙活動法(2016年人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律)
・宇宙活動法(適用対象外行為,宇宙資源開発探査機,適用対象者,適用非対象者,ロケット落下等損害賠償責任保険契約,ロケット落下等損害賠償補償契約,打上げ実施者のロケット落下等損害賠償責任,人工衛星管理者の人工衛星落下等損害賠償責任)
・リモートセンシング法(2016年衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律,衛星リモートセンシング装置の使用に係る許可制度,衛星リモートセンシング装置,衛星リモートセンシング記録の取扱いに関する規制,衛星リモートセンシング記録取扱者の認定制度)などを解説。
③宇宙ビジネスに関する法的留意点(技術の保護)
・宇宙ビジネスに関する技術の保護についての視点
・知的財産権の保護に関する留意点(特許権としての登録による保護,営業秘密としての保護,職務発明に関する権利譲渡や報奨金の規定の問題,社内管理体制,契約上の保護)
・国家安全保障上の観点からの保護(外為法上の安全保障規制に基づく保護,規制対象,リスト規制,キャッチオール規制,対象となる取引,宇宙ビジネスにおける技術の取扱,対内直接投資に関する事前届出制度の改正)
・先端技術流出の防止方法(技術の流出の防止の視点,社内管理体制の整備,投資家サイドから見た技術流出の防止)などを解説。
④宇宙ビジネスに対するエクイティファイナンス
・出資割合に基づく相違点と留意事項(成長ステージにおける出資の方法,投資ステージと法的構成の関係)
・デューディリジェンスのポイント(デューディリジェンスの目的,特に注意すべき検討項目)
・契約事項(契約の種類,契約条項における視点)
・出資契約(出資に関する契約,出資契約の内容)
・株主間契約(株主間契約の視点,株主間契約の内容)
・株式譲渡契約(株式譲渡契約の視点,一般的な内容)などを解説。
⑤宇宙ビジネスに対するデットファイナンス
・デットファイナンスに適さない宇宙ビジネス(宇宙活動法の対象外である宇宙ビジネス)
・デットファイナンスに適した宇宙ビジネス(リモートセンシング衛星運用ビジネス,打上げ施設運用ビジネス)
・担保設定上の留意点(宇宙関連資産に対する担保設定の問題点と考察,人工衛星に対する担保権,人工衛星譲渡担保権と保険会社の権利との関係,保険金請求権質権)などを解説。
⑥宇宙ビジネスに関する契約実務
・宇宙保険実務(損害保険)
・打上げサービス契約(打上げサービス契約の法的性質,複数の委託者から複数のペイロードを受託,打上げ事業者の責任,クロスウェーバー,解除条項,その他の打上げサービス契約の条項)
・衛星購入契約(衛星購入契約締結までの一般的な流れ,衛星購入契約の条項,人工衛星の所有権及びリスクの移転時期)などを解説。
まとめ
官需主導で行われてきた宇宙ビジネスですが、民間企業の参入を促すために昨今宇宙活動法やリモートセンシング法など相次いで施行。また宇宙ビジネスに向き不向きの資金調達があるので、時折、専門家に相談することも大事です。