「宇宙×食」ビジネスのポテンシャル

2019年3月27日に「宇宙×食」ビジネスのポテンシャル~サステナブルな宇宙生活と地球環境の実現を目指して~ が開催されました。まもなく始まる宇宙旅行サービス、そして各国の宇宙機関や民間企業で進む月面基地計画や火星移住構想など、より多くの人が宇宙に行く時代が近づいています。
 
宇宙生活に欠かせないものと言えば「食」。中でも月面や火星での食は、地球からの食料輸送に加えて、現地にて少ないリソースで効率的に食料を生産したり、調理・加工する技術も求められてきます。本イベントでは、「宇宙×食」におけるビジネス、そこで必要となるテクノロジーについて、当該分野のキーマンを招き、そのポテンシャルに迫り、また、宇宙生活と地球生活に共通する点などにも着目し、サステナブルな人類未来の実現についても話し合いました。

■Opening Remarks

リアルテックファンドの小正瑞季氏から「Space Food Xは、サステナブルかつWell-beingな人類未来社会を実現する共創プログラムです。
Business(新事業開発,マーケティング,ファイナンス等) 、Culture(日本の食文化,和の精神,クリエイティブ等)、Tech(フードテック,物質循環技術,ロボティクス等)により、SDGs解決策としての地球食料ビジネスや宇宙生活課題解決としての宇宙食料ビジネスに貢献します。」とSpace Food Xについて説明され、開会の挨拶としました。多種多様な30以上の企業・大学・研究機関・有識者等と共に推進していくようです。

■Guest Talk

株式会社三菱総合研究所の吉田まほろ氏は「宇宙食料マーケットの市場規模・波及効果」の中で「シナリオは探査ミッションおよび観光ビジネスが牽引。地産地消化も進展と設定。市場規模は宇宙食+サプライチェーンで数千億の市場ポテンシャルがある。技術波及見据え取り組むとさらに魅力的。波及効果としては、地球・社会にとって水・タンパク質不足解決に向けた先行投資となる。」と話されました。
2045年頃までに宇宙食の市場規模は月への滞在が200人位になると1,000億程になり、国内レタス卸売金額と同等になるようです。

■Pre-Panel Discussion

JAXAの菊池優太氏は「新たな宇宙ビジネスの共創と宇宙食のこれまでとこれから」の中では「これからの宇宙ビジネスは宇宙を使ってどんな価値を世に届けるかが大切。宇宙の超長期滞在の時代に入ると、宇宙食1.0(調理済の食事を持ってあがる)⇒宇宙食2.0(食材を持ってあがり調理する)⇒宇宙食3.0(現地で育てる地産地消)の宇宙食の進化のポテンシャルがある。」と宇宙食の歴史や進化にも言及されました。月・火星での探査・移住時代は、日本が宇宙の「おいしい」を創るのかもしれません。

Panel Discussionは2つありました。その中で特に印象に残った点は、モデレーターの「足の長いビジネスにどう対応する?」の質問に「段階的に下げていく必要がある。培養肉の生産前に再生医療という道もある。」(インテグリカルチャー株式会社・羽生雄毅氏)「地球上のビジネスが宇宙ビジネスのシーズを高めている。これからさらにオープンイノベーションが大事になる。」(株式会社ユーグレナ・鈴木健吾氏)といった言葉です。起業家精神が未来を切り開くことをぜひ実証していただきたいと思います。

■懇親会

懇親会では、月面での地産地消を想定した「月面ディナー1.0」の試食もありました。ちなみのメニューは、細胞培養マグロと月の海,スペースソルトでマリネした月を模した月面産フォワグラのコンフィ,ミックスサラダとムーンヴァレースタイル,藻類のグリーンスープ,培養肉のメリメロステーキ,和の伝統あまのたむ酒と苺の大福,環るソイスティックなどです。個人的な感想としては、まあまあの味でしたので、月面ではフルコースディナーになるのでしょう。