超小型衛星による新しい宇宙開発への挑戦と宇宙ビジネス化

2019年3月22日に「超小型衛星による新しい宇宙開発への挑戦と宇宙ビジネス化」のセミナーが開催されました。講師の中須賀真一氏は、現在、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授です。内閣府宇宙政策委員会宇宙民生利用部会長でもありますので、政府の宇宙開発利用の舵取りをしております。セミナーは、下記の4つの視点から説明されました。

①超小型衛星への世界の潮流
②東京大学における超小型衛星開発の経緯
③超小型衛星のミッション例
④New Spaceの台頭と新しい宇宙産業

宇宙工学の専門知識はとても難しいので、ビジネス寄りの言葉でお伝えします。

①超小型衛星への世界の潮流

超小型衛星は中大型衛星と比較して、超低コスト(200億円以上⇒数千万~5億円以下),短期のライフサイクル(5年以上⇒1~2年以下),衛星システムがシンプルで透明(部品点数が少ない)となり、超小型衛星によるGame Changeが起きている。そのため、ビジネス的に有効な投資回収までの時間が短期化し、新規の宇宙プレーヤーが参入してきている。

②東京大学における超小型衛星開発の経緯

2003年6月30日に東京大学と東京工業大学のCubeSat(1kg世界最小衛星)が世界に先駆けて打上げ運用に成功。現在、東京大学の超小型衛星は10衛星開発済み、9機打上げ済みとなっている。超小型衛星の教育的意義は、宇宙開発プロセスの実践的教育・工学教育と座学では難しい学生によるマネジメントがある。

③超小型衛星のミッション例

コスト(3億以下),開発期間(2年以下)の爆発的な低下により、敷居を根本的に下げたと言える。出来ることは、地球規模で衛星を分散配置し頻繁にみること(コンステレーション),そばを飛ぶ複数機による共同ミッション(フォーメーションフライト),パーソナル衛星・マイ衛星の概念(パソコンと同様の革命),本格的ミッションの前の試行実験・実証,海外新興国への衛星開発支援に適切なサイズといったところです。

④New Spaceの台頭と新しい宇宙産業

2017年には世界の宇宙ビジネスの市場規模は約30兆円になっている。ただ、日本政府の宇宙予算は3,200億から3,400億規模で、宇宙機器産業の官需率は約92%。米国では、2,000年以降に民間宇宙ビジネスは拡大し、打上げ,宇宙旅行,ISS・軌道,小型衛星,惑星探査等でベンチャー企業が出現。日本は、第3世代(国のお金で民間がロケット・衛星を開発・運用)から第4世代(民間が民間の投資で衛星・ロケットを開発・運用し、政府はそのサービスを購入)への移行が求められている。

まとめ

超小型衛星の重要な役割は、宇宙で何かをやろうと考える人を増やし、国から民間へシフトすることに貢献する。また、中大型衛星にも転用出来る技術の芽出しの場とし、宇宙開発利用する人材育成の格好の場とすることが大切。宇宙が産業化するチャンスの時に国際連携で日本がリーダーシップを発揮することが望ましい。