市場規模70兆円の宇宙ビジネスにあなたはどう関わる!?

2019年3月19日に株式会社ワープスペースが主催する「Forbes JAPAN副編集長と宇宙スタートアップCEOが語る!市場規模70兆円の宇宙ビジネスにあなたはどう関わる!?」が開催されました。

宇宙産業は大きな転換点に来ています。
2025年には、宇宙旅行、宇宙ドローン、宇宙輸送、宇宙における資源採掘など経済活動が当たり前となると言われています。さらに、2030年までには70兆円以上になると予測されています。2017年のスマホ市場がちょうど70兆円くらいとのことです。

今回のセミナーは、目前に迫りつつある「2030年」に、宇宙産業はどのようなマーケットになっているのか、そして、わたしたちの生活にどんな影響を与えるのかがテーマでした。フォーブスジャパン副編集長谷本氏をモデレータとしてお招きして、宙畑代表城戸氏、弊社CEO常間地氏の業界をけん引するお二人が話しました。

■タイムスケジュール
18:30~   開場
19:00    オープニング(常間地氏より今回のイベントの趣旨の説明)
19:15-20:15 対談(城戸氏と常間地氏によるパネルディスカッション)
20:15-20:25 質疑応答
20:25-20:30 宇宙産業(ワープスペース)との関わり方をご紹介
20:30-20:40 アンケート回答
20:40-21:30 懇親会

■オープニング

オープニングでは、ワークスペースの常間地氏が、セミナーの趣旨について話しました。
本セミナーでは大きく下記2点を参加者に伝えたいとのことでした。

1:宇宙ビジネス参入のハードルは高くないこと
2:広く宇宙ビジネスについて知ってもらいたいこと

また、ワープスペースの活動を例に、宇宙ビジネスの外にある産業との親和性を強調されました。ワープスペースは、筑波大学における6年間の超小型衛星開発で培った経験とノウハウを基に設立された企業です。現在は、主に超小型人工衛星の事業を行っており、宇宙空間と地上がシームレスにつながるようにしたいと説明しました。

衛星データを活用したビジネスは、先物取引などの金融や農業など様々な分野で活用されはじめています。しかし、そうした事例があまり知られていない事を問題点としてあげています。宇宙ビジネスを活用するためのニーズは宇宙産業の中にはなく、既存のビジネスの中に活用のヒントやアイデアがあるとしています。だからこそ、より多くの一般の方や異業種の方が、宇宙ビジネスを正しく分かりやすく知るための機会が大事だとしています。

■対談 ディスカッション


ディスカッションでは、フォーブスジャパン副編集長谷本氏がモデレーターを務め、下記のお二人が対談をされました。

・株式会社ワープスペース
取締役CEO(最高経営責任者)
常間地 悟 氏

・さくらインターネット株式会社
xDataAllianceプロジェクトAlliance Business Groupプロデューサー
城戸彩乃 氏

Q:グローバルという世界において、宇宙産業はどういった状況にあるのか?

A:城戸氏
宇宙産業市場は、3つの構造になっています。

1「宇宙探査」
いわゆる「宇宙に行こう」という分野。
(惑星探査、ホテルや旅行、資源など)

2「宇宙利用」
人工衛星でできることで、地上や実際の生活に還元していく分野。
(天気予報、地図アプリ、株価、物流、農業など)

3「宇宙製造・インフラ」
宇宙を活用できるためのインフラを整える分野。
(主にロケットや、人工衛星をつくって打ち上げたり、地上局などの機器製造。また、宇宙利用を促進するためのシステムを開発するなど)

世界の宇宙産業市場は、約2017年で約38兆円ほどです。
宇宙ビジネスというと、ロケット打ち上げが一般の人には一番イメージされ易いかと思います。
しかし、その中でロケットや衛星事業は、2.5兆円ほどで、世界的に見ても産業規模としてはおおきくないそうです。

ロケットや衛星は、衛星データなどを利用するために打ち上げられます。
そのため、衛星データなどを活用する「宇宙利用」大きくしていかないと、宇宙製造・インフラ産業もおおきくならないとしています。
衛星データ活用などを広めていくことが、今後の宇宙ビジネスが発展していくために今必要なことだと説明されています。

Q:宇宙産業において、世界の中での日本の立ち位置は?
A:城戸氏
世界の中では、日本の市場規模は少なく、データプラットフォームをくつっている海外の企業も多いのが現状。
その中で日本にしかできないこと、日本のデータを使わないとできない部分をつくっていくことが必要。
解像度など、これ以上は日本にしかできないなどを確保していくことを考えないといけない。

A:常間地氏
基礎技術や精度の高いものはあるが、広げられていないのが現状。
宇宙産業は転換点にあり、ロケット製造や打ち上げの費用も下がるなどコスト構造も安くなってきている。
今後は、ハードウエアのスタンダードをとれるかどうかがポイントになるとしています。

Q:課題をこえていくために、日本としてやっていくことはあるのか?
A:城戸氏
スピード感のある政策はしてきているが、視点として「いま」になってしまっている。
世界的にリモートセンシングがきているから追いつかないといけないという感じ。
それではいつまでたっても先を走っている相手には追いつかない。

数年後、確実に先に見えているものは何かを議論して、資金投下していくなど、追いつくや追い越すではなく、違ったものを打ち出す政策が必要。
そうすることで、日本が宇宙産業として大事なポジションをとれるのではないか。

Q:宇宙事業の促進によって私たちの生活はどのように変わるのか?
A:常間地氏
働き方という視点だと、官需メインから民需メインに変わっていくことは確実。
そのため、さまざまな業界の人が宇宙産業に入りやすくなっていき、自分の働き方に宇宙という選択肢が増えることになる。
エンジニアやCAD、マーケティングなど、いまやっていることを活用して宇宙に関われるという可能性が広がっていくことになる。

A:城戸氏
教育の視点から見ると、衛星データ活用があたりまえになってくることで、授業などでも活用できるようになります。
いままでは、宇宙好きというと宇宙飛行士になるなどしか進路がなかった。
しかし、授業の課題や夏休みの自由研究でも、衛星データを活用したテーマを選ぶことができるようになる。
学校教育や就職においても、宇宙でこういうことをやりたいというものが本当に身近になるかもしれない。

Q:イーロン・マスク氏の火星移住のような壮大なロマンが実現するのはいつ?
A:常間地氏
イーロンマスク氏の火星旅行は2022年予定となっているが、一般人が試せる安全さはまだ先になるはず。
しかし、クラブツーリズムが宇宙旅行を企画するのが現実となるところまで来ている。
2020年代の後半には、富裕層のかなりの人が宇宙に行き、滞在できるようになるのではないか。
そうなれば、宇宙カジノやホテル、レストランなどが必要になり、地上の産業が宇宙にコピーされることになっていくのではないか。

A:城戸氏
宇宙に地上の産業がコピーされる時は近い将来きっと来ると思う。
家電やおもちゃ、家具メーカーでも、自社の商品を宇宙で使うにはどうするかを考えておくと、その時が来たらすぐに対応できるかも。

A:常間地氏
宇宙滞在については、有人でも無人でも、宇宙船が一番の対策課題になる。
素材メーカーなど、宇宙で使える素材に投資することで数年先にNASAに採用されるなどもありえるかも。

■質疑応答(会場の人に質問タイム)


会場の参加者からの質問に常間地氏と城戸氏が答えるフリーの質問タイムが設けられました。基礎的な部分というよりも、どうやって宇宙ビジネスを活用していくのかという実践的なアイデアが多く出てきたと思います。

Q:宇宙での健康や食事はどういった検討をしていくのか?
A:城戸氏
月で本気で生活するにはという議論の中で、下記3つの問題がある。

1:筋力、運動の問題
月では重力が地球の6分の1程になるため、ジムはほんとうに大事。
ある程度筋力を使う設計や、筋力を維持できるトレーニング施設は必須。

2:色味の問題
機械の中であったり、資材も現地調達が増えるとなるとまわりに色がなくなる。
人間は色がないと健康にあまりよくないのでそれも課題。

3:植物の栽培の問題
乾パンなどでは富裕層はいやだろうから食事は大事
月での植物の栽培についても検討課題。

Q:どうやって一般の人が宇宙の課題を知ることができるのか?
A:常間地氏
メディア側が、もっと面白おかしく取り上げても良いのではないか。
宇宙ビジネスはどうしても一般の人からしたら離れた世界になっている。
言葉で打破していくのは難しいので、映像やアートなど目で見える方法で広めていくも良いのではないか。

Q:衛星データでどんな意外な使い方ができるのか?
A:常間地氏
ビジネス的な観点でいうと、赤外線衛星での反応で何の動物なのかを解析できれば世界中の野生動物の分布を解析できるかもしれない。
南アフリカなどでは、安全確保などにレンジャーを雇ったり、たくさんの資金が流れている。
その解決に活用できるかもしれない。
いまは「こんなことできないか」という自由なアイデアが集まってくるのが大事。

Q:未来の宇宙産業に個人が関われることがあるのか?
A:常間地氏
ご自身の専門が生かせる場所が宇宙ビジネスにはたくさんある。
気軽な気持ちで軽くドアノックをしてもらうといいかも。

A:城戸氏
ご自分のビジネスの課題に「こんなことできないかな、使えないかな」と気軽に考えてもらうのがいい。

Q:最後にこれからの抱負は?
A:常間地氏
宇宙空間においても、人間の活動領域はとまることはない。
インフラ、ロケット、データ活用などいろんな領域において、もっと自由に楽しんでやっていきたい。

A:城戸氏
いままでの宇宙産業は、ユーザーがいなかったから産業の芽がなかなか生まれてこなかった。
現在は、他分野の人が興味を持ってくれるようになってきている。
だからこそ、宇宙側が、他分野の人が入ってきやすい環境をつくることが大事だと思っている。

■まとめ

宇宙ビジネスは、難しいものでもなく、専門的でとっつきにくいものでもないということが伝わるセミナーでした。使い方によっては、既存の業界のなかにある課題を解決することができるかもしれないものが宇宙ビジネスです。宇宙業界だけで考えるのではなく、どう使っていくかを他分野の人たちとともに考えることが、今後の宇宙ビジネス発展のポイントになりそうです。