宇宙ゲームシリーズ1 銀河を征服せよ!宇宙をテーマにした最高のカード&ボードゲーム5選

みなさん、こんにちは。本連載では、たくさんの「宇宙ゲーム」を紹介していきます。

宇宙を扱った小説や映画はたくさんあるものの、それにもまして宇宙を舞台にしたゲームは豊かな広がりを見せています。その理由として、「人類の宇宙進出という課題を達成するために はゲーム的な思考法が欠かせず、たくさんの種類のゲームが実は、人類を宇宙に送り出すため の教育的な役割を果たしているのではないか」という仮説が存在します。

その証拠として、SpaceX社のイーロン・マスク氏も、シミュレーションゲーム(戦略ゲーム)と言われる種類のゲームのオタクであり、自身の経営や事業構想にその発想を生かしていると語っています。

戦略ゲームでは、予測不可能な状況の中で、限られたリソースを適切なタイミングでリアルタイムに配置し、自ら主体的に目標を設定してそれを確実に遂行していくことが要求されます。 このような能力は、グローバリゼーションとテクノロジーの爆発的進化によって国際関係の予測不可能性が増大し、人類の宇宙進出が現実的な課題として迫ってきている21世紀だからこそ重要性を増しているスキルだと言えるでしょう。

今回の記事で扱うボードゲームは、マスク氏が好むような、高度なテクノロジーを駆使したビデオゲームと違って、あくまでアナログなカードやボードの上で展開される由緒あるゲームです。しかし、アナログだからこそシンプルな仕組みの中に工夫を凝らす高度な「遊び知能」が要求されるし、どんな場所にいても仲間がいれば楽しめる点が特徴です。

「宇宙兄弟」の中で、宇宙飛行士選抜試験で真っ白なジグソーパズルを組み立てるテストがあったことをご存じの方も多いと思いますが、シンプルであればあるほどむしろ難しく、プレーする側の想像力を要求するという側面があります。

それでは、シンプルでありながら奥深い宇宙ボードゲームの世界をめぐる旅に出発しましょう。

①宇宙ボードゲームの古典『コズミック・エンカウンター」

https://boardgamegeek.com/boardgame/15/cosmic-encounter
最初にご紹介する「コズミック・エンカウンター」は、1977年に制作されて以来、現代に至るまで40年超にわたってリメイクされ続けてきた宇宙ボードゲームの古典的名作です。最近では、欧州を中心に世界的ブームを巻き起こしたHBOのファンタジードラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」仕様のリメイク版が作られたことでも話題になりました。
ゲームは惑星間の侵略戦争をモチーフにしており、四つの種族が侵略・交渉・能力を駆使して5つの植民地(アウター・コロニー)を作ったプレイヤーが勝つというシンプルな仕組みになっています。
このゲームの魅力は何といっても、「ゾンビ族」「クローン族」など、さまざまな特殊能力を持つ種族が存在し、ゲームの基本ルールを無視・破壊・作り変えることができてしまうところです。ルールの破壊によってゲームが予測不可能な方向に向かうので、何回やっても飽きずに楽しむことができる点が特徴と言えるでしょう。
ゲームの基本ルールが破壊される、というのは、現代のビジネスや国際関係の現場で頻繁に起きていることかもしれません。例えば、ビジネスにおいても、それまでの商慣行を破壊する「ディスラプト」を行った企業がユニコーン企業として急速に成長するという事例が後をたちません。ルールがあるようでない、本質的にはアナーキーなこの世界の本質を、『コズミック・エンカウンター』は教えてくれます。

②協力型カードゲーム「ザ・クルー 第9惑星の探索」

https://boardgamegeek.com/boardgame/284083/the-crew-the-quest-for-planet-nine
次に紹介するのは、「ザ・クルー 第9惑星の探索」と題されたカードゲームです。ボードゲーム大国・ドイツで生まれた、世に稀に見る「協力型トリックテイキング」カードゲームとして ドイツやフランスで年間ゲーム大賞を受賞しています。
ゲームコンセプトとしては、「直接会話ができない宇宙空間で意思疎通を図りつつ、宇宙船の 乗組員として50ものミッションに挑む」という設定で、指定されたプレイヤーが適切なタイミ ングで「トリック」を勝ち取れるように、お互いの思考を読んで、協力することが要求されます。
トリックテイキング、略して「トリテ」とは、「全員が順番にカードを出し、全員が一枚ずつカードを出したところで、出されたカードに対し、カードの強弱に基づき勝ち負けを決める」というミニゲームの総称です。普通、このようなカードゲームでは、場に出されたカードなどからお互いの思考や手札を予測することで、相手を出し抜くことを考えるものですが、このゲームの場合は参加者みんなで協力してクリアするので、誰も嫌な気持ちにならない点が特徴です。
最近のZ世代やα世代の子供達は対立を好まず、協力型のゲームを好む傾向があると言われていますが、高度な知能を騙し合いに使うのではなく、より難しいミッションをともに達成するために使っていくというコンセプトが建設的で素晴らしいですね。未来の宇宙飛行士には、ぜひこのゲームを通して戦略的協力思考を訓練していってほしいものです。

③制限時間内に宇宙船を組み上げる「ギャラクシートラッカー」

https://boardgamegeek.com/boardgame/31481/galaxy-trucker
次にご紹介するのは、リアルタイム宇宙船構築ゲーム『ギャラクシートラッカー』です。
設定としては、プレイヤーは銀河系最大手の公衆衛生システムに勤務する雇われ宇宙船運転手として、下水施設のパーツを流用して宇宙船を組み立てた上で、危険だらけの銀河を航行し、 目的惑星まで宇宙船を破壊されないようにしながら荷物を送り届ける必要があります。
一般的なカードゲームと違って、手番は決められておらず、砂時計を2回ひっくり返すまでの時間で、みんなで一斉に山札からタイルをめくっては配置していきます。その後の宇宙船航行フェーズの際に、途中の惑星で荷物を載せたり、流星群をレーザー砲で打ち落としたり、海賊や密輸業者を撃退する必要があるので、それらの予測不可能なイベントを想定した上で船を設計していく必要があります。限られた制限時間の中で、山札から早い者勝ちで手札を選び取って組み立てていくので、大変な集中力と戦略構築能力が要求されるのが特徴だと言えるでしょう。

④平和裡に領土を拡張する『テラミスティカ:ガイアプロジェクト』

https://boardgamegeek.com/boardgame/220308/gaia-project
4番目にご紹介するゲームは、『テラミスティカ:ガイアプロジェクト』。こちらはボードゲームの古典『モノポリー』の宇宙版とも言える領土拡張ゲームです。近隣種族と戦争をすることによって領土を拡張する『コズミック・エンカウンター』とは違って、「戦争をせず、いかに平和裡に領土を拡張するか」がテーマになっています。
ゲームのルールとしては、7種類の惑星に生息する14の宇宙種族が、他の派閥と競争しながらも平和裡に近隣の惑星を自分たちの生息できる環境に「テラフォーミング」していくのですが、全ての行動にはコストがかかり、さらにコストを下げるための能力開発にもまたコストと時間がかかるので、限られた資源を能力の発展に費やすか、近隣惑星の植民地化に費やすかの選択が迫られることになります。能力にはテラフォーミング、ナビゲーション、人工知能、ガイアフォーミング、エコノミー、リサーチの6つの種類があり、また、宇宙種族によって能力特性が異なるので、プレイヤーは各種族の「経営者」となって資源配分を決定していく必要があります。
ちなみに、このゲームの中で地球に当たる「ガイア惑星」は、全ての派閥によって植民地利用されている設定になっています。地球にさまざまな民族が存在するのは、実は派閥の違う宇宙種族なのでは…?なんていう妄想ができて楽しいですね。

⑤エイリアンが侵入した宇宙船内で各自のミッションを遂行する『ネメシス』

https://boardgamegeek.com/boardgame/167355/nemesis
最後にご紹介するのは、SFホラーをモチーフとした半協力ボードゲーム『ネメシス』です。 2013年制作の比較的新しいゲームですが、映画『エイリアン』が大好きな方には一度はプレーしていただきたい名作となっています。
ゲームは宇宙船でコールドスリープから目覚めたら、謎の宇宙生命体(イントルーダー)が宇宙船の中に侵入していることが判明していたという設定から始まります。特徴としては「半」協力というところがミソで、プレイヤー同士がそれぞれの秘密の目的を持ち、その達成のため に行動しなければならないというルールになっています。また、ゲームの途中でイントルーダーに感染するというシナリオもあり、その場合感染したプレイヤーの目的自体が悪質宇宙人側にすり替わってしまうので、注意が必要です。
本作の特徴は、何といっても敵エイリアンのフィギュアのデザインクオリティが高いところ。 クラウドファンディングで4億円程度を集めて制作されたゲームですが、そのうちのかなりの金額をフィギュアに費やしているのではないかとも言われています。映画もそうですが、やはりゲームにおいても視覚に訴える要素は重要ですね。

いかがでしたでしょうか。魅力的な宇宙ボードゲーム、カードゲームを5作品紹介してきましたが、どのゲームも没入感が高く、長時間プレーしていても飽きないどころか、これからの未来社会をデザインしていく上で重要な示唆を与える作品が多かったかと思います。 ボードゲームは少々お値段が張るので手に入れづらいかとは思いますが、ボードゲームカフェなどで気軽に借りてプレーすることもできるので、ぜひ試してみてくださいね。

次回は、「広がる銀河で冒険しよう:宇宙を舞台にしたRPGゲーム特集」と題して、最新のテクノロジーを駆使した宇宙RPGを紹介していきます。お楽しみに!