宇宙人とUFOシリーズ6 エイリアンにとって宇宙とは何か:宇宙人による哲学の歴史
「宇宙とは何か、我々はなぜここに存在しているのか」を問う哲学にとって、「地球外生命体」という存在は非常に重要です。
なぜなら、その存在の有無によって、世界観が根底的に塗り変わってしまうからです。宇宙人の存在を認めることによって、それまで「宇宙に住む唯一の知的生命体」を自負してきた地球人たちは、あたかも天動説から地動説に移行した時のように、宇宙におけるその特権的地位を奪われることになります。
また、もし地球外生命体がはるか何千光年の先から宇宙船によって地球に飛来してきているのが事実だとすれば、「宇宙はどんな姿をしているのか」という科学的前提についても、私たちは深刻な修正を行う必要に迫られるでしょう。
私たちは現在、地球や太陽の周りを取り巻く真っ黒な真空としての「宇宙」を思い描いているわけですが、「距離」や「空間」の概念が歪むことで、宇宙人にとってはあたかも「地下鉄」のような縦横無尽な通路として捉えられているという情報もあります。
「世界地図」というものが古代ギリシアのプトレマイオスの時代からどんな紆余曲折を経て現在一般的に使われているメルカトル図法に落ち着いたのかという歴史を知る人からすれば、現在地球人が思い描いている「宇宙地図」が、古代人なみに遅れたものである可能性が高いことも容易に想像できるはずです。
イスラエル高官が暴露した「宇宙哲学」
2020年12月に行われたイスラエル政府の高官であるハイム・エシェド氏へのインタビューでも、「宇宙人が宇宙をどのように捉えているのか」についての興味深い指摘がなされています。
彼によれば、宇宙人は宇宙に点在する生命体の意識を「織物」として捉えており、その「織物」の全てを理解することが彼らの唯一の目的だとされています。
また、彼らの航行原理としては、「特殊な空間で乗り物を包み込み、その空間丸ごと移動させることで光速をはるかに超えたスピードで移動する」と説明しています。実際、宇宙の膨張速度は光速より速いことが知られており、空間自体にまつわる速度が光速を超えることを相対性理論は禁じていないので、原理的には可能だということになります。このように、「距離」がぐにゃぐにゃになる世界では、私たちが通常思い描いているような「入れ物」としての宇宙の姿は極めて不正確なものとなるでしょう。
このように、宇宙人の目線から地球や宇宙の姿を見つめ直すことで、他では得られない貴重なヒントを得られることがわかります。過去には、自らその思考実験を試みた思想家もいれば、コンタクティたちが遺した「宇宙人自身による哲学」に関する文献も存在します。
神秘思想家グルジェフの「宇宙哲学」
「宇宙人目線の哲学」の先鞭をつけた思想家は、なんといってもこの方、G. I. グルジェフでしょう。19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した神秘思想家で、「エニアグラム」や「ワーク」といった概念の発明で今日にも大きな影響を及ぼしています。青年期に中央アジアの砂漠地帯を中心に遍歴をしながら修行を行い、その後ロシアを拠点として弟子を抱えるようになってからは小規模なスピリチュアル・レッスンを主軸としていた彼ですが、1924年に交通事故に遭ってから、著作の執筆に専念することになります。
彼の主著として知られる『ベルゼバブの孫への話 – 人間の生に対する客観的かつ公平無私なる批判』という奇妙な本は、日本語訳で2段組で700ページを越える大著ですが、その中では「ベルゼバブ」という名前の地球外生命体の目線から捉えた「地球の歴史」が開陳されます。その内容たるや、今まで誰も聞いたことのない造語、まさに「宇宙語」ともいうべき不思議な語彙のオンパレードで、シュタイナーやブラヴァツキー夫人などの著作に親しんできたような読者であってもぶっ飛ばされるような斬新さに満ちています。
「ベルゼバブ」の世界観によれば、地球人は〈思考〉〈感情〉〈動作〉という三つのセンターからなる「三脳生物」と言われる独特な生物で、その知性のあり方から宇宙の他の生命体の関心をひき、観測の対象となっているとされます。また、地球人は数千年前から「現実と幻想を転倒して捉える」ような脳の遺伝的習慣にとらわれており、今だにそのくびきから脱却できていないといった分析もなされます。
これらのグルジェフの宇宙哲学は、ポストモダン思想家のドゥルーズやデリダなどの思想、あるいは古くは仏教思想との類縁性も指摘されており、多くの思想家の関心を惹きつけてやみません。
エイリアン・インタビューの「宇宙哲学」
ローレンス・スペンサー氏による「エイリアン・インタビュー」の中では、ロズウェルで墜落したUFOの操縦士とされる「エアル」と名乗る女性のグレイ型エイリアンによる「宇宙哲学」が披露されます。(「エイリアン・インタビュー」についての概要は、本シリーズ第4回目の連載「どのようにエイリアンと対話するのか:コンタクティーによる証言の歴史」をご覧ください。)
彼女によれば、あらゆる知的生命体の本質は永遠の生命である「IS-BE」(魂のようなもの)であり、その本質に気づかないまま輪廻を繰り返すように地球人は巧妙にプログラムされているそうです。また、宇宙には過去に権勢を誇った「旧帝国」勢力と、現在宇宙の中枢をになっている「ドメイン」という勢力が存在し、地球は「旧帝国」から追放された政治犯や反体制的な芸術家たちが収容される監獄として機能していると彼女は語ります。過去1万年のスケールで展開される、古代エジプト文明やマヤ・アステカ文明における「ドメイン」勢力による地球人解放のための介入の歴史には目を見張るものがあります。
さらに、地球に存在する多種多様な生命たちは、進化論によって分岐してきたわけではなく、宇宙の進んだバイオテクノロジー専門の研究者たちが商業的利益のために競ってDNAを開発した高度な「商品」であり、カモノハシなどの独特な生物はアート作品として非常に人気なのだという説明がなされます。この主張は突飛に聞こえるかもしれませんが、進化論では説明がつきづらい生物の本質的多様性の謎に対する一風変わった解答として非常に興味深いですね。
ウィングメーカーの「宇宙哲学」
最後にご紹介したいのが、「現代最大のミステリー」とされる「ウィングメーカー」シリーズの宇宙哲学です。「ウィングメーカー」は1998年にジェームズと名乗る人物が自身のウェブサイト上で公開した一群のコンテンツを指し、アメリカニューメキシコ州の洞窟の中で発見された未来人からのタイムカプセルを解読した文献という体裁をとっています。作者や成立背景自体も謎のヴェールに包まれていることから、様々な憶測が飛び交う文献ではあるのですが、中身自体は非常に独創性に富み、単なる創作とは思えないような密度があります。
中でも注目に値するのは第1巻の巻末に付された「グロッサリー(定義集)」です。その中では「人間という装置」「ソース・リアリティ」「ジェネティック・マインド」「ホールネス・ユニバース」など計16項目に詳細な記述がありますが、これらの全てが深淵な哲学に裏付けられていることが読み取れます。特に印象的なのはその独特な時間論であり、時間には私たちが通常知覚している「水平時間」の他にもうひとつ、神秘的超越体験によってのみ知覚しうる「垂直時間」が存在し、その垂直時間には「存在する全ての時間が互いに重なり合って」いて、「永遠」の別名をもつとも語られます。一見してわかりづらい定義ですが、日本が誇る哲学者である九鬼周造も、晩年の思索において似たような発言をしており、瞑想による「垂直的脱自」という概念を提唱していたので、あながち突飛なアイデアではなさそうです。
エイリアンは神を信じているのか?
本記事を締めくくるにあたって、エイリアンにとって神という存在はどのように捉えられているのか、ということを現時点で手に入る状態から論じてみたいと思います。エシェド氏によれば、「エイリアンは神を信じておらず、ただ宇宙の全てを理解したいと思っている。エイリアンレベルの知能からすれば、神は純粋な数学である」とのこと。また、「エイリアン・インタビュー」の中でも、似たような世界観が表明され、霊魂の不滅は認めつつも、進化した知能にとっては宗教や神は必要がないという意見が表明されています。一方で「ウィングメーカー」の中では、万物の根源としての神が存在し、宇宙の目的は神がその多様性の中で「最も広大な連続体としての生命」を体験し、「全ての次元の生命を経験するための新しい方法」を常に考え続けているという世界観が展開されます。いずれにしても、現在の地球人が想定しているような宗教や神とは全く違った形のスケールの大きな神観を持っていることは確実だと言えるでしょう。
次回の記事では、エイリアンの姿についての捉え方の変遷をテーマに、「エイリアンはどんな姿をしているのか」について考察していきます。お楽しみに!