宇宙人とUFOシリーズ1 なぜUFOはタブーにされてきたのか:政府による情報工作の歴史
みなさん、こんにちは。 突然ですが、みなさんは「UFO」や「宇宙人」という言葉を聞いて、どんな印象を持ちますか? 大半の方は、虚実ないまぜの怪しげな偽情報といったイメージを持たれていると思います。ところが実際には、UFOや宇宙人にまつわる目撃情報の中には、政府機関によって公認されたり、複数の証言者によって目撃されて客観性が担保されている証拠がたくさんあります。 特に、2017年にニューヨークタイムズがペンタゴンのUFO研究に関するスクープ記事を出してからというもの、政府機関による情報開示が一気に進んできています。もはやこれらの未確認 空中現象については、膨大なデータの蓄積を前にして「存在を否定する方が無理がある」とい う段階にまで来ているのです。 しかし、一部のUFO研究家を除く一般認識では、まだまだUFOはトンデモ話の一環にすぎないのが現状です。今回の記事では、その元凶となったアメリカ政府の情報工作の歴史と、それに対する反動からの新展開を追っていきます。
1940年代の衝撃から「プロジェクト・ブルーブック」へ
アメリカを中心にUFOが頻繁に観測されるようになったのは、1940年代後半のことです。当時の観測事例の多くが軍や航空会社のパイロットなどの信頼性の高い観測者によって報告されていました。政府もこれを真剣に受け止め、1947年にはアメリカ空軍の中にUFOについての情報を収集するための極秘プロジェクトである「サイン」が発足しました。これが、後に「プロジェクト・ブルーブック」として知られる政府調査計画で、その後19年間にわたってUFO情報の収集に当たることになります。軍隊の内部に設置されたわけなので、もちろん主要な関心事は「それが国家安全保障に対する脅威であるかどうか」という点です。当初はロシア製の新兵器ではないかと思われていましたが、調査が進むにつれて、「どうやら地球上で作られたものとは考えられない」という路線が明確になってきます。1952年には空軍機がUFOらしき物体を迎撃するために派遣され、全国的な大ニュースになります。ところがここで、CIAが横槍を入れます。政府文書によると、CIAは「パニックを最小限にするために、一般大衆に何を伝えるべきかを判断する国家政策」の必要性を訴え、翌年の1953年には専門家からなる科学諮問委員会を設置しました。四日間に及ぶ秘密会議を通して、彼らはメディアのみならず、心理学者や広告会社、アマチュア天文家、ディズニーなどのエンタメ業界などと連携して、UFO現象を嘲笑し論破するように国民を促すための「教育プログラム」を設計したのです。これがその後数十年にわたって、UFOに対する一般国民の態度に大きな影響を及ぼし続けることになりました。政府の抑圧的な方針に対して、一部の国民による真実を求める声も上がっていました。共和党のジェラルド・フォード下院議員は、UFOに関する議会公聴会を召集し、1966年末にはコロラド大学で政府資金によるUFO研究行われることが決定します。この成果が1968年に発表された『未確認飛行物体の科学的研究』、あるいは『コンドン・レポート』です。1,000ページに及ぶ膨大な目撃事例の中に、30%以上の「説明のつかない事例」が含まれてました。ところが、 研究代表者であるコンドンは本レポートの結論部分で「UFO研究から得られる科学的成果は何もなく、これ以上の計画はムダだ」と宣言し、1969年12月にプロジェクト・ブルーブックが中止されることになるのです。
これ以降、アメリカ社会の公の場において「UFO現象」はタブーとして葬り去られることになります。
CIAの宣伝工作を破壊した「COMETA報告書」
ところが、UFOは別にアメリカだけで出現しているわけではありません。世界中で出現してい るのです。長距離飛行の経験が長いパイロットたちは、国籍にかかわらず一定の割合でUFOを目撃し、その一部が報告され記録として残ります。ところが問題は、「この報告記録を政府が どのように扱うか」、という点です。 UFO現象に対してアメリカのように抑圧的な宣伝工作を行う国がある一方で、そのほかの国はそうでもありませんでした。その代表がフランスです。 アメリカでプロジェクト・ブルーブックが終了した7年後に、UFO現象に対する探求の情熱は フランスに受け継がれました。アメリカのUFO研究が軍部であるペンタゴンの支配下に置かれているのとは対照的に、フランスのUFO研究機関であるGEIPANは、科学機関であるフランス国立宇宙センター(CNES)の傘下にあります。そのため、当時のCNESの代表者イヴ・シラールの指導のもと、科学的好奇心に基づくオープンで自由な雰囲気の中でUFO研究が行われることになりました。 その結果として誕生したのが、1999年7月に発表された非公開の報告書である「COMETA報告書」です。フランスの退役将校をはじめとする高官たちが集まって、各自が持っているUFOの 目撃情報を集めた研究レポートでした。レポートの中で、彼らはアメリカ政府がUFOの存在を 否定する過剰な秘密主義のもとで「偽情報」の拡散と目撃者の弾圧を行っていることを告発した上で、複数の状況証拠(レーダーエコーや地上の足跡、写真、電磁気現象、植物の光合成プロセスへの影響に至るまでの膨大な証拠)に基づく大量のUFO観測事例を提示しました。 ちなみに、GEIPANのホームページは現在もアクティブに更新されています。下記ホームページの中の「ケースD」とされるものが、真剣な調査の結果「正体不明」と判断された正真正銘のUAP(未確認空中現象)の報告事例です。それぞれの事例についての調査の徹底ぶりに驚かされます。ぜひ覗いてみることをお勧めします。
https://www.cnes-geipan.fr/fr
2017年のスクープ記事:UFOからUAPへ
COMETA報告書で報告された事例のうちの中で明らかになったUFOの特徴とは、「人工的に制御された物体」であり、「静止飛行や無音飛行、慣性の法則を無視する加速度と速度、電子航法や伝送システムへの影響、停電を誘発する明らかな能力」を保持するものとされます。これらの驚くべき現象が、独立した目撃者による複数の証言によって多数示されていることは、世界の研究者に大きな驚きを持って迎え入れられました。 そのうちの一人が、現存のUFOジャーナリストで最も大きな影響を持つと言われるレズリー・ キーンです。下院議員の孫としての豊富な人脈を活用して、一般人の触れることのないたくさんの情報源にアクセスする中で、元々UFOに興味のなかった彼女が「UAP現象の存在」を確信するようになります。 ここで整理しておきたいのが、「UFO」(未確認飛行物体)と「UAP」(未確認空中現象)の 用語の違いです。元々、空中を飛行する円盤を一般的にUFOと読んでいましたが、アメリカで の情報工作のせいもあって完全に眉唾のイメージがついてしまったため、より広範囲かつ厳密 に定義された説明不能現象のことを指して「UAP」と改名したのです。実際、UFOと見なされる現象の中には、「気象観測気球、照明弾、スカイランタン、編隊飛行する飛行機、秘密軍用 機、太陽を反射する鳥、太陽を反射する飛行機、飛行船、ヘリコプター、金星や火星、流星や隕石、宇宙ゴミ、人工衛星、サンドッグ、球状の稲妻、氷の結晶、雲からの反射光、地上の光やコックピットの窓に反射した光、気温の逆転、穴あき雲、最近ではスターリンク」などなど、勘違いによるものがたくさん混ざっています。しかし、UAPとは、これらの現象のいずれでも絶対に「説明がつかない」ことが科学的に立証された現象のことを指すのです。 真剣な調査の結果、レスリー・キーンらは2017年にニューヨークタイムズで、国防総省が進めてきた極秘のUAPプロジェクトの内情を暴いたスクープ記事(“Glowing Auras and ‘Black Money’: The Pentagon’s Mysterious U.F.O. Program”)を発表。ここから議会でのペンタゴンへの情報開示への圧力が増していくことになります。
トランプによる「宇宙軍」創設と2021年のペンタゴン・レポート
この流れの中で、2019年にトランプ大統領が米軍の6番目の部門として「宇宙軍」を創設しました。表向きの目的は、サイバー的な意味での「宇宙戦争」においてロシアや中国に遅れを取らないためや、宇宙産業振興による経済の盛り上げなどの目的が挙げられていますが、その背後にこの「UAPに対する情報開示」の圧力が働いていたのは明らかでしょう。 ところが2020年の大統領選挙でトランプが落選して以来、この流れはやや失速することになりました。 形式的な意味での情報開示は進みました。2021年6月にはペンタゴンが「初期評価:未確認航空現象」というレポートを発表し、ペンタゴンが収集してきた大量のUFO映像が明るみに出ましたし、2022年には約50年ぶりになるUFOについての公聴会が行われ、大きな話題を呼ぶことになりました。しかし、単なる目撃情報が開示されただけで、それ以上の本質的な発見を生むことはなく、今までに確認されていた事実の再認識にとどまりました。一度は解除されかけたブレーキが再び締め付けられてしまったようにも感じられます。
UFOに対する正しい向き合い方
さて、UFOについて話をすると、UFOの存在を「信じている」と表明する「信奉派」と、「そんなものは科学的にありえなくて馬鹿らしい」という「論破派」にほとんどの人が二分されます。ところが実際には、そのどちらも科学的に正しい姿勢とは言えません。 UFOもUAPも「未確認」であることを主張しているだけで、つまり「現在の科学技術では説明不可能な現象」を指す言葉にすぎません。そういう意味で、パイロットたちの証言によって明らかになっている現象は、いかなる科学的説明も拒むことがたくさんの事例を通して証明されている以上、科学的思考からは否定することができないものなのです。つまり、UAPとは信じるべき対象ではなく、ただ「そこにある」れっきとした事実なのです。 もちろん、それが宇宙人の乗り物であるかどうかはまた別の議論です。しかし、数限りない観測事例から、それらのUAPが「知性ある動き」をすることもまた示されています。ここから推論されうる妥当な結論の一つとして、「宇宙人が地球にやってきている」と仮定することは科 学的態度と矛盾しません。 本当に科学的な態度とは、UFO現象の存在を感情的に否定するのではなく、そこにある現象をただ客観的に分析していくことです。たくさんの情報が開示されたとはいえ、まだまだ分析にはデータが足りません。フランスのGEIPANを見習って、日本でも真剣なUFO現象についての 情報収集機関の設立を検討しても良いのではないでしょうか。 次回の記事では、UFO懐疑論において一般的な、「なぜUFOは公の場に姿を現さないのか」という素朴な疑問について、エイリアン側の視点に立って考察していきます。お楽しみに!